新しい詩の運動をまきおこしてきた現代詩人・最果タヒさんによる言葉を体感できる『最果タヒ展　われわれはこの距離を守るべく生まれた、夜のために在る6等星なのです。』が12月4日から東京・渋谷パルコにて開幕しました。

初日には開催記念のトーク＆朗読イベント「夜のために在る6等星、観測日記」が行われ、最果さんの大ファンである南果歩さんが出席、作品の魅力について語りました。この模様をレポートします。

 

イベント会場に入ると白い壁やオブジェの至るところに最果さんの詩が書かれており、中には詩の文字だけを透明な素材で形作った置物や、天井からモビールでたくさんの紙が吊るされ、その紙の両面には詩の一節が記され、場内の空調で紙が揺れる度に様々な言葉が目に飛び込んでくるという、不思議かつ刺激的な展示がなされていました。

 

トーク＆朗読イベントでは南さんが最果さんの作品の中から好きな詩をいくつか選び、読みあげました。

南さんが少年のような声質で最果さんの詩を朗読すると、目で文字を読むのとはまた異なって、最果さんの詩の世界がより一層立体的に耳から身体の中にしみこんでくる、そんな不思議な感覚が生まれていました。

朗読が終わると、南さんと、別の場所にいる最果さんがLINEで繋いで話をするという今どきのトークがスタートしました。

南さんは「私はタヒさんのファンで、自宅で夜な夜なタヒさんの詩を朗読しているんです。それは自分のために詩を読んで自分に聴いてもらっているという不思議な状態なんです」と最果ワールドにハマりまくっている自身の生活を垣間見せ「詩の良いところは一人称を自分に置き換えて味わえる事。自分と詩の中身が直結する事が楽しくて一人遊びをしているんです」と語りました。

「詩は大抵は目で読んで自分の中に入れるものかと思いますが、音で入れるとまた別の感覚が呼び覚まされる感じがして朗読する事が好きなんです」と語る南さんは「女性として生まれ育った事で女性という事にとらわれているところがあるんですが、詩の世界では表に出さないあいまいな部分で遊べるなと思うんです」と南さんならではの楽しみ方を説明しました。

そんな南さんは最果さんを「中原中也以来感動した詩人。詩の世界のバンクシーなんです!!」とリスペクト。

また「最果さんはコロナ禍の前から“心のディスタンス”と言っていました。人間の中のダークサイドと上手く付き合っていかないと最後に言葉にして口に出したときに人を傷つけてしまう。だから心のディスタンスを取る事で人をおもんばかりながら繋がっていくことの大切さを語っている」と魅力を説明。

するとLINEの向こうで最果さんが「人付き合いが苦手なだけです。(中原中也と比べるなんて)おこがましい事です‥‥‥」と恐縮しきりでコメントしていました。

 

トークイベント終了後、囲み会見が行われました。南さんは「2020年は長くもあり短くもあり、大変な年を駆け抜けた一年だったと思います。皆この1年を乗り切ったね!!頑張ったねとお互いに褒め合いたいです。そんな年の瀬にこのイベントは相応しいものだったと思います」とコメント。

そして最果さんの作品の魅力について「直接は励ましてはくれないが、距離があっても遠くから必ず見ているからね、というスタンスで包んでくる、その距離感が心地いいんです」と語りました。

またトークイベント中に最果さんを「詩の世界のバンクシー」と評した事について「本名も知らなければどこにいるかもわからない。何者か分からない人が発する言葉だからこそイメージがよりひろがるんです」と述べ、いつか最果さんと直接会ってみたいか？と聞かれると「会わないほうがいい。もし会ったとしても絶対口外したくないです。でも会ったらきっと誰かに言いたくなってしまうから(笑)会わないほうがいいですね」とファンならではの複雑な胸中を語っていました。

『最果タヒ展　われわれはこの距離を守るべく生まれた、夜のために在る6等星なのです。』は12月20日まで東京・渋谷パルコ4Fのパルコミュージアムトーキョーにて開催中です。

 

【公演概要】

■タイトル　『最果タヒ展　われわれはこの距離を守るべく生まれた、夜のために在る6等星なのです。』

■日程・会場

東京：2020年12月4日(金)～12月20日(日)　渋谷パルコ4階 パルコミュージアムトーキョー　会期中休館日なし

名古屋：2021年2月13日(土)～2月28日(日) 　名古屋パルコ 西館6階 パルコギャラリー　※2/17（水）休館日　

大阪：2021年3月5日(金)〜3月21日(日)　心斎橋パルコ 14階 パルコイベントホール　会期中休館日なし

■入場料　一般800円、ミニ本付チケット1,800円

■主催　キョードー大阪／パルコ

■企画・製作　キョードー大阪

■協力　sou nice publishing

■公式オームページ　https://iesot6.com/

(2020,12,05)

photo:Akiko Yamashita／text:Saki Komura

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