2019215日(金)より東京・兵庫にてミュージカル『イヴ・サンローラン』が上演されます。日本初演となる本作の衣裳デザインを担当するのは、『エリザベート』ほか人気舞台の衣裳を手掛けてきた朝月真次郎さん。朝月さんにとってイヴ・サンローランという存在とは、また衣裳デザイナーと呼ばれる人は具体的にどのような仕事をしているのか、貴重なお話を伺ってきました。

 

−ミュージカル『イヴ・サンローラン』の衣裳デザインのお仕事が依頼された時の心境を聴かせてください。

嬉しかったですね。1950年に生まれた私は大学卒業後、「JUN」というアパレルメーカーに入りました。入社した時、佐々木忠(現・「JUN」会長)さんがサンローランのデザインが大好きで、サンローランのトレンチコートやシャツなどを研究されていたんです。入社当時、私は企画部ではなく営業職で、30歳になって初めてマーチャンダイザー(商品の企画開発から一貫して担当する業務)をやらせていただくようになりました。その時にパリに行かせていただき、サンローランのお店を見て大変感激したんです。若い頃に大きな影響を受けたサンローランを描く作品に今回携われる事になり、心から嬉しく思っています。

 

−衣裳デザインのお仕事をされるようになったのはいつ頃からですか?

40歳になる前に「Luna Mattino」というお店を出させていただき、その後43歳くらいで初めて衣裳デザイナーになったんです。初めはシェイクスピア作品やドラキュラの衣裳を手掛けていましたが、ある時、宝塚歌劇団の小池修一郎先生(劇作家・舞台演出家)がお店にいらして「うちの舞台衣裳を作ってもらえないだろうか。というのも歴代のトップたちが貴方の店の服を普段から好んで着ているんです。あんなかっこいい服が衣裳だったらという声も出ていまして」とおっしゃられたんです。その後、東宝で『エリザベート』を舞台化する事になり、「ならば衣裳は朝月さんにお願いしたい」という話になり、改めて小池先生と打ち合わせをするようになったんです。

宝塚のトップスターが朝月さんのお洋服の大ファンだったというのは嬉しい話でしたね。そこからは順調にお仕事を進めていけたのですか?

それがね。最初は何を言っても「それは演劇界の常識です」と返されました。商業としての服飾デザインと舞台衣裳デザインとはお作法が全然異なるんです。

 

例えばどんな所に違いがあるのですか?

特にミュージカルの場合、腕が真っ直ぐ上に挙げられる事が必須なんです。例えばつり革を掴む動きは日常生活でもありますが、そのポーズをした時に服が引っ張られてしまうのはミュージカルとしてはNG。そうならないように脇の下にマチを入れるんですが、普通のファッション業界でいれるマチの幅より衣裳の場合はもっと大きく入れる必要があるんです。最初の頃は普通の服で入れるくらいのマチを当たり前のように入れて衣裳を作ったんですが、「これでは全然腕が上がらない」と厳しく指摘されまして。40歳でしたがこの世界では「一年生」状態でした。最初はそういう所からスタートしました。

 

言われてみると、舞台上の役者さんたちはどんなに激しく動いても衣裳がヨレたりせず、いつも美しいラインのままですね。今後芝居を観る時は衣裳にも注目してしまいそうです。

そのうち演出家からの要望、そしてプロデューサーから言われる予算の中で衣裳代をどうやりくりしなくてはならないのかも分かってきました(笑)。例えば30人くらい出演する舞台であれば主役に全体の3050%の予算をかけて衣裳を作ります。演出家さんとしては主役をもっと輝かせたい、たくさん衣裳を着せてファンの目を釘付けにしたいと思うもの。特に女性が主役となる作品の場合、デザインについてリクエストや衣裳の点数も多くなりますね。続いて、アンサンブルさんですが、何役も演じる必要があるので、作品によっては5着くらい用意することもあります。反面、準主役がいちばん少なくて作品によっては1着だけの場合もあるんですよ。

おもしろいですね!!朝月さんが過去に手掛けた作品を改めて見てみたくなります!!

そう言われると思って、東宝版『エリザベート』の衣裳デザインを持ってきました。これは一路真輝さんがエリザベートを演じた2000年上演時のものです。高嶋政宏さんが演じたルキーニの衣裳は小池先生からほぼ1回でOKが出たんですが、エリザベートの衣裳は相当こだわりましたね。こういった赤い線の部分が修正指示なんです。こちらは少女時代のエリザベートの衣裳です。当時一路さんはこのかわいらしい衣裳を見て「私、これを着ることができるかしら……」と照れていたんですよ(笑)。

微笑ましいエピソードですね!!さてそうなると今回の『イヴ・サンローラン』がどのような衣裳になるのかますます気になりますね。

演出の荻田浩一先生のリクエストをもとに、さらに深く考えていくのですが、サンローランさんが偉大であるがゆえ、安易には作れませんね。自分が憧れていた方を描く舞台ですから、自分にとって「最後の作品」と思うくらい全力を尽くして取り組みたいです。今回主役のサンローランを演じる東山義久さんと海宝直人さんは、サンローランさんのようなメガネをかけると似た顔立ちに見えますが、体型が全然違うんです。東山さんはダンスをたくさんされてきた方なので、上半身がすごく筋肉隆々。一方で海宝さんは全体的に細身。そうなると服のデザインはもちろん、生地から変える場合もありえます。それとは別の視点ですが、お二人の衣裳は同じディテールにしないほうがいいかなと思います。だって、違いがあるならどちらの舞台も観たくなるでしょう()

 

確かに()!!さて、これから本番に向けて朝月さんは『イヴ・サンローラン』に全力集中ですね。

実は何本か重なっていまして……。ミュージカル『アニー』(再演)、音楽劇『ライムライト』、舞台『暗くなるまで待って』、ミュージカル『悪ノ娘』、そして『イヴ・サンローラン』と。こんなに作品が重なったのは初めてなんです。

 

―……タフですね。

でも1月からは『イヴ・サンローラン』1本で気を引き締めてやりますよ!!

 

 

ミュージカル『イヴ・サンローラン』は、以下の日程で上演されます。

美しく煌くファッションの世界を、朝月さんが手掛ける衣裳と共にどうぞお楽しみください。

【公演概要】

タイトル ミュージカル『イヴ・サンローラン』

日程・会場

東京公演:2019215()33() よみうり大手町ホール

兵庫公演:2019326() 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール

作・演出 荻田浩一

音楽 斉藤恒芳

衣裳 朝月真次郎

出演

東山義久、海宝直人(Wキャスト)上原理生、大山真志、川原一馬、安寿ミラ ほか

公式サイト https://www.yume-monsho.com

photo(interview):Hirofumi Miyata

interview&text:Saki Komura


朝月さんの衣裳デザインへの想いを語っていただいたインタビューが、1/25(Fri)発売のNorieM magazine #36に掲載しております。マガジン詳細はこちら↓

https://noriem.stores.jp/items/5c3e97a7c3976c112efa4113