すっと伸びた背筋に明るい笑顔の真矢ミキさんから毎朝、元気をもらっていた人は多いだろう。宝塚歌劇団花組のトップスターとして人気を集め、退団後もドラマ、映画、バラエティー、司会と活躍する真矢さんが舞台に帰ってきます。出演するのはフランスの劇作家ヤスミナ・レザのビターなコメディー『正しいオトナたち』。せりふ劇は約7年ぶりという真矢さんに舞台にかける思いをお聞きしました。

 

-久しぶりの舞台『正しいオトナたち』は出演者は4人だけの濃厚なせりふ劇です。本格的なせりふ劇は『彼女の言うことには』(2012年)以来ですが、このタイミングで、ストレートプレイに出演されようと思われたきっかけは何でしたか?
「ストレートプレイにぶつかることを昔からしてみたかったというのがありました。ここまでしっかりしたせりふ劇はもしかしたら初めてかもしれません。ただ、せりふ劇だからとかを考えると緊張感が募ってくるだけですし、舞台のカテゴリーに境界線はないと思っています」

 

-『正しいオトナたち』は、二組の夫婦の物語です。ウリエ夫妻(妻ヴェロニック=真矢ミキさん、夫ミシェル=近藤芳正さん)の息子に、レイユ夫妻(妻アネット=中嶋朋子さん、夫アラン=岡本健一さん)の息子が怪我を負わせたことから物語が始まります。
「結婚しておいてよかったと思いますね。子供はいないけれど、この夫婦の気持ちがわかる気がするんです。人の関係って、毎秒ごとに流れが変わっていくことってありますよね。人が増えたり減ったりすることでも変わっていく。先日、家に久しぶりに人を呼んだんです。そうしたら思ってもみないような展開になっていくわけですよ。料理を一品つくっているうちに、ある人が説教を始めていて、“どうした?どうした?”ってなっていたら、だれかがなんだか感動していたり。気づいたら“えっ?寝てるの?”ってなっていたり。この芝居と変わらないものが見えたんです。私が今、そういう目線になっているからかもしれませんが、ほんの数時間前までみんな気取った声を出してたのが、最後はうちのソファに寝ていた。この戯曲も何回か読んでいるうちに、ぐるぐると変わっていく感じがして、正解はないんだろうけれど、“何だ?どうした?”となっていく展開とそのゴールが面白いんです」

 

-二組の夫婦が子どもの怪我について話しあっているうちに……と、その展開を話してしまうとネタバレになってしまいますが、本音がこぼれ出てきてほんとに面白いですね。
「自分も女性なので決めつける言い方はしたくないけれど、女性って蓄積型なのかなと思ったりします。良く言うとギリギリまで頑張って許容範囲を広げたいと思っている動物かなと。男性は蓄積とかが嫌いだから、その場でそのまま言ってみる。そんな会話が展開していく感じですね」

 

-演じるヴェロニックはどんな女性ですか?


「彼女は何かを紐解くのが好きなのね。職業がまず歴史に携わる研究者。今の文化にたどり着くまでの歴史をさかのぼっていくことに興味がある。未来より、過去の積み重ねで今の自分を判断している。人生に上昇というものがあるなら、その階段には全部知識とか経験を積み重ねていきたいっていう考えだと思う。彼女にとってヒントは過去にある。そういう女性なのに面白いのは、現実はマニュアル化していて本当のところが見えていないところ。見えない過去、空気に蒸発しているかのような昔の世界を自分の中で立体的に積みあげて自分なりの過去を見つけている人が、なぜか現実はそうみられない。でも、それに自分で気づけていないまま話が展開していくというね」

-ヴェロニックとミシェルの関係もおもしろいですよね
。

「自分に持ってないものがある素敵なパートナーを選ぶ女性だなと思いますよ。自分の知識と見合うぐらい、なんならそれを超えてくれる相手を要求する夫婦と、全く違うもので私を癒してくださいみたいな夫婦がいるよね。ヴェロニックの足りないその現実の部分をミシェルが埋めているかな。そういう男性を選ぶ感性もおもしろいなと思いますね」

 

-登場する二組の夫婦像も全く違います。

「むこうは未来に向かっていて、うちは旧型かな。あえて変わりたくないと思っていて、現実やその傾向、トレンドとかに興味がない夫婦かなって思っています。でも、相手の素性がわかったら、この喧嘩は不利だなと思いはじめたりもするんですよね」

 

-一見、等身大の会話劇ですが、話の展開、人物像に予想がつかない。真矢さんがどう演じるかも想像がつかないです。
「私も想像はついてないけど(笑)、私が出会ってきた人物でそういう風な人はいるんだな。そういう人の形を参考にするかどうかは別としてね。自分自身やこの役はそんな人たちのどこにあるのか、何が本当に正しいんだろうって考えます」

 

-そして、いつのまにか違う話を見せられているようになって…一味変わった戯曲です。
「不協和音が鳴り続けてるんだけど、なんだかそれがとっても心地よくもなったりする。“敵の敵は味方”じゃないけど、途中で形を変えて人間関係が育っていく感じの物語。“えっ、今度はそこにいくの?”みたいなことの連続です」

 

-登場人物には共感しますか?
「するする!!夫婦やパートナー間で、こんな小さいなこと言い出したらきりがないということが蓄積されていく感覚ってわかるなと思う。その小さなことで嫌な朝を迎えたくないし熟睡したいがために、“大人”というボックスにそれをしまって寝るとかね。聞いてみたら夫も、もしかしたら同じようなことをやっているかもしれないですね」

-シニカルで、思わず笑ってしまうシーンも多いです。


「ほんとシニカルね。建前と思っていなくても、実はすごく自分の中でストレスになっていることってみんなあると思う。小学生だって忖度している。防衛本能というか共存本能というか、人と共に生きていくために、教わったわけではなく感じ取ってきたことがある。舞台を観て若い人がそういう何かを感じ取ってくれたらうれしいな。ご夫婦で観ていただいたら、家に帰って必ずいろんなことを思い出してほしいなあ。本番までにはたどりつく場所を見つけたいとは思っているけれど、でもそこを押し付けるのではなく、匂うがごとく香るがごとく、ふわあっと見えてきたらいいなと思っています」


-最近のファッションで、真矢さんのトレンドはありますか?

「今の私のトレンドは、動きやすいものかな。年齢がいった証みたいなトレンドだけど(笑)。昔は、ファッションとかお化粧って、メイクアップ、ファッションアップと、とにかく“アップ”するものだと思っていたけれど、今はなんだか自分の中身を超すものを着たくないなあと。等身大でいるようになったかな。TPOを外さないぐらいで生きていくのがいいなって思います」

 

-ファッションの好みは変わりましたか?


「大きく変わりましたね。いい女をしてみたかった時期があって。宝塚で男役だったので一回やってみたかったんですね。でもそれを通ったら、“なるほどね”とまた変わっていって。それを何回か繰り返して、今は自分らしさに落ち着いてきたところですね。いつもは基本、デニムをはいてますね」

 

-いろんな仕事を経験してきて、この先の真矢ミキをどうしていきたいと考えていますか?
「自分を千切りにしていきたいな。みじん切りでもいい。性格なのか、どうしても大きく切っちゃう。それも歯ごたえがあって好きだけど、時にみじん切りにしておいたほうがもっといろんなレシピに使えるかなと思うんですよ」

 

-ではもう一回やってみたいこと、そして突き詰めてみたいことはありますか?
「もう一回やってみたいことを考えたら、今までやってきた役全部!!自分が以前より進化しているって信じたい。今のほうが絶対うまくできると信じたい。でも、その役はきっとその時のその一回なんですよね。一日生きれば、また違う経験をするしね。今はもっとこう自分の中の焦点をあわせたいと思っていて…」

 

-仕事に関しての焦点?真矢ミキ自身にも?
「そう。自分の中のカメラをちゃんと使いこなせている?って自問自答している。私が持っている探究心なんかはいいカメラだと思うんだ。でも、そのレフの合わせ方とか、テクニカルな部分だとか、固めに入らず感性を解き放つこととか、あとフィジカルも。もっとしっかり合わせられるようしていきたいです」

 

 


【profile】

大阪府豊中市出身。O型。
元宝塚歌劇団花組男役トップスター。 1995年、「エデンの東」でトップに抜擢される。以降、宝塚史上初である篠山紀信氏による男役の写真集や武道館コンサートを成功させるなど、独自のアイデアや今までにない自由な発想で異端性を存分に発揮し「宝塚の革命児」と話題になる。1998年10月、宝塚歌劇団を退団。1999年より女優デビュー。

 

【公演概要】
■タイトル 舞台『正しいオトナたち』
■日程・会場
東京先行公演:2019年11月28日(木)~11月29日(金) IMAホール
名古屋公演:2019年12月4日(水) 日本特殊陶業市民会館ビレッジホール
兵庫公演:2019年12月7日(土)~12月8日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
東京公演:2019年12月13日(金)~12月24日(火) 東京グローブ座
■出演
真矢ミキ 岡本健一 中嶋朋子 近藤芳正
■公式ホームページ https://www.tadashiiotonatachi.com/

photo:Hirofumi Miyata
styling:Miho Ishino
interview&text:Oko Takubo
Dress:36,600yen+tax/TCN(TCNジャパン tel:03-6427-9010)

(2019,11,25)

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