栗山民也さん演出、菅田将暉さん主演にて、アルベール・カミュの傑作戯曲『カリギュラ』がこの秋上演されます。本作でローマ帝国の若き皇帝にして暴君カリギュラの部下であり、やがてカリギュラに反旗を翻すケレア役を演じるのが橋本淳さん。これまで『ヒストリーボーイズ』『クレシダ』などで物語のキーマンとなる役を次々と演じ、観る者の心に爪痕を残した橋本さん。壮大なスケールで上演される本作にどう向き合おうとしているのか、今の思いをうかがいました。

 

まずはこの作品のお話が来た時の率直な気持ちを聴かせてください。

「昔、Bunkamuraシアターコクーンで2007年に上演された『カリギュラ』(主演:小栗旬さん)を観たのですが、まさか自分がこの作品に出演する日が来るとは思っていなかったので、驚きと嬉しさ、そしてプレッシャーも感じました。とはいえ、やはり嬉しくて、さらにこの物語で一番好きなケレア役をやらせてもらえる事を光栄に思っています。戯曲も10年くらい前から読んでいて、一番想像を掻き立てられるのがケレアでしたから。また、演出を栗山民也さんがやる事も決め手の一つ。やりますと即答しました()

そんな思い入れたっぷりの『カリギュラ』ですが、戯曲を読んだ印象は?

「読んでいるだけでもう、幸せですね。でも最初は本当に話が分からなくて何を言っているんだ、この人たちはと思っていました。何度も読んだけど本当に分からなくて一度戯曲をしまったんです。その後、この上演の話が出たとき、部屋の奥から戯曲を引っ張り出して改めて読んでみましたが、それでも分からなくて。少しずつ紐解いていくしかないなと思い、まずは作者のカミュの分析から始めました。哲学の勉強とギリシャ神話、キリストがどの段階で登場した、また、哲学も虚無主義と実存主義を中心に学んで。その後改めて戯曲を読んだら、今の時代に近いものとして感じられたんです。そこからはどんどん現代っぽく考えられるようになっていき、凄くこれは人間的な話だなと分かりました。ケレアという人物もつかめてきました。今もまだまだ勉強していますが、この時間が凄く楽しいです」

 

事前準備のレベルが凄すぎますね!!他の作品でもそんなに研究されるんですか?

「基本的に僕は調べたがりなんです()。でもやり過ぎて変な考えに固まるのも良くないですから、ほどほどを心がけています。この『カリギュラ』は本当に取っ掛かりがなかったので、仕事の合間合間で調べてみようと思いました。もう何回戯曲を最初から最後まで読んだか分からないくらいですが、一回読むたびに少し新しいものが見えてくるんですよ。それが宝探しみたいで楽しくて。例えば、この台詞ってこの人に向かって言っているんだな、とか。カリギュラに話しているけど、これはセゾニアに話しているのかも、など。そういうのが見えると台詞のニュアンスも変わってきますし、後に続く台詞が全部変わってしまうこともあるんです。カリギュラに対するクーデターについても、ケレアは首謀者という設定ではありますが、僕としてはケレアは親友であり教育係だと思っていて、その視点で見るとクーデターのきっかけがすごく分かるんですよ」

この物語で観客に伝えたい事は、どんな事だと思いますか?

「最初は分からなかったのですが、今ちょっと分かってきたような気がします。今この日本の状態を見ていると今、考えるべき時だぞ、日本人と言っているようですね。人間って慣れる生き物だと思うんです。怖い事も悲しい事も慣れてしまう。自分の命の終わりが見えないと必死になれない。そういう事を突き詰めて考えるきっかけをカリギュラは貴族たちに、そして観客に伝えようとしているのではないかな。カリギュラは自分の利益のためにやっているのでは決してないと思うんです。自分が疫病になってやると言うカリギュラですが、本当は狂っているのではなく、演じているのではないか、その事をケレアはもう分かっているのではないかなと思うんです」

橋本さんが考えるケレア像を栗山さんに伝えた時の反応はいかがでしたか?

「まだそんなに詳しく話し合っていませんが、おもしろいですね。ただ、ストーリーがある内容ではないので、言葉の重みとか一言発する時の熱量によって時代性が出るので、そこはきっちり演じてほしいとおっしゃっていました。大事にして演じたいです」

 

先に栗山さん演出と聞いて出演を決めた、と話されていましたが、栗山さんとは 今後どのように接していきたいですか?

「栗山さんの作品は何作も拝見していますし、出ている役者が皆キラキラと輝いて見えるんです。年上だから、大先輩だからと遠慮せず怖がらず、栗山さんと対等に向き合い、教わるのではなく、栗山さんにきちんと自分の考えを提示しながら舞台に立ちたいと思います。今回の仕事はきっと自分の財産の一つになるでしょうね。栗山さんの知識は非常に豊富ですから、血肉にしたいと思っています。実は『クレシダ』の演出家である森新(太郎)さんからも栗山さんの現場でいっぱい学んできてねと言われました。怖い言葉だなとも思いますが()。森新さんとはプライベートでも仲良くしていただいていますし、また一緒にやりたいと思う素晴らしい演出家さんの一人。そんな森新さんが栗山さんと!?おお、いいじゃん!!一つ成長できるよって言う栗山さんの存在は相当ですよね、きっと」

 

橋本さんから見たカリギュラ役の菅田さんはどんな役者さんですか?

「菅田さんとは初めて共演しますが、高い集中力を持った役者さんだなと思います。頭できちんと考えて芝居を組み立て、その一方で感覚が非常に研ぎ澄まされているところもあって。男優と女優の両方のエッセンスを持っている方だと思います。また菅田さんは反応がストレートなのですごくわかりますね。表情を見ていればあ、今の台詞は悩んでいるなとか腑に落ちた!!”という時はスパッと明確にわかる。すでに尊敬できる存在で、本読みの段階で泣きそうになりました。早く舞台の上で彼を見たいです」

菅田さんと橋本さんの対決も非常に楽しみですね!!

「舞台セットもシンプルで、人間同士のパワーバランスや威圧感、そこでうごめく人間の業や人間ドラマが見どころになると思います。メインキャスト以外の人たちについてもそれぞれの人生観のうねりを楽しめるんじゃないかな。僕としては、ケレアという人物は、冷静で頭がよいキャラだけどどこか人間くさいところもあるということを見てほしいです。ここから本番まで1ヶ月くらいの間にそのバランスの調整をしていきたいですね。楽しみにしていてください」

 

橋本さんにとっての気分転換のアイテムは何でしょうか?

「犬の動画をWEBで観ています。今特にハマっているのは、ゴールデンレトリバーの動画です。犬、欲しいですね~!!玄関を開けると犬がちょこんと座って待ってくれているなら、もう居酒屋とか行かないですぐ帰宅します()。今はまだペットを飼える家ではないので、他人様の動画ばかり見ています。犬を見たさに夕方の公園によく出没しているくらい好きなんです()。一番好きなのは柴犬。あとはジャック・ラッセル・テリアとかコリーとか顔がとんがっている系の犬が好きみたい。もちろんパグも好きですけどね。ていうか犬なら何でも好きです()!!でも、ペットショップには近づかないようにしています。だって抱っこしたら最後でしょ?店員さんも仔犬をあやしながら僕を抱っこして~と小芝居をしてくるでしょ。買いたくなるから勘弁してくださいって思うんです()


profile

1987114日生まれ。東京都出身。A型。

2004年にドラマ『WATER BOYS2』でデビュー。『連続テレビ小説ちりとてちん』(07-08)でヒロインの弟・正平役。以降、TV、映画、舞台と幅広く活躍中。

舞台では、宮田慶子、宮本亜門、白井晃、永井愛、ケラリーノ・サンドロヴィッチ、深津篤史、森新太郎、小川絵梨子、山内ケンジ、河原雅彦、福原充則、加藤拓也など、様々なジャンルの演出家の作品への出演が続いている。


【公演概要】

タイトル 舞台『カリギュラ』

日程・会場

東京公演:2019119()1124() 新国立劇場 中劇場

福岡公演:20191129()121() 久留米シティプラザ ザ・グランドホール

兵庫公演:2019125()128() 神戸国際会館こくさいホール

宮城公演:20191213()1215() 仙台銀行ホールイズミティ21 大ホール

作:アルベール・カミュ

翻訳:岩切正一郎

演出:栗山民也

出演:

菅田将暉 高杉真宙 谷田 橋本 秋山菜津子 

康義 石田圭祐 世古陽丸 櫻井章喜 和也 野坂 坂川慶成

石井 石井英明 稲葉俊一 川澄透子 小谷真一 小比類巻諒介 西原やすあき 高草量平 一登 平野 峰崎亮介 吉澤恒多

公式HP   http://caligula.jp/

(2019,11,08)

photo;Hirofumi Miyata/interview&text:Saki Komura

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