第27回読売演劇大賞の贈賞式が2月28日都内にて高円宮妃殿下ご臨席のもと、開催されました。

本賞は、1994年に創刊120周年を迎えた読売新聞の記念事業として創設。1月から12月までの通年単位で国内で上演された舞台作品から、すぐれた舞台作品・演劇人を顕彰するものです。表彰部門は「大賞」「部門最優秀賞」(最優秀作品賞、最優秀男優賞、最優秀女優賞、最優秀演出家賞)「最優秀スタッフ賞」「杉村春子賞(新人賞)」「芸術栄誉賞」。
今年の贈賞式は新型コロナウイルスの影響を踏まえ、入場前には手洗い、うがい、アルコール消毒、場内では登壇者、来賓、報道陣、スタッフすべてがマスク着用を義務付けられました。

では、この贈賞式の模様をダイジェストでレポートします。

 

杉村春子賞に選ばれたのは菅田将暉さん。(『カリギュラ』の演技)
プレゼンターとして登壇したのは昨年同賞を受賞した松下洸平さん。松下さんは「『カリギュラ』の東京千秋楽を観劇し、感動という言葉では言い表せないくらい、感動を飛び越して胸が痛かったです。苦しくて苦しくて。そういう作品に巡り会えることはそうたくさんあることではないでしょうし、そんな作品を作りあげた演出の栗山さんと、なによりカリギュラ役を演じた菅田将暉さんに“完敗”という感じでした」と感想を語りました。

菅田さんは、受賞のお礼を口にしつつ、「普段、作品が終わるとすぐに忘れるんですけど、この『カリギュラ』は終わって数ヶ月経つ今でも台詞とかが頭にこびりついていて、最近はちょっとうんざりするぐらいだったんですけど、それぐらい、身体と心に残る作品と出会えたことに感謝しています」と笑顔を見せ「何よりも、稽古場からすごく楽しい現場でした。栗山さん、キャストの皆さんが自由にやらせてくださったことが、このような賞に繋がったことに心から感謝したいと思っています。これからも、ただただお芝居をできることに感謝をして、自分らしく、楽しく、自由にやっていきたい」と力を込めていました。

 

最優秀女優賞に選ばれたのは神野三鈴さん。(『組曲虐殺』『マクベス』の演技)
プレゼンターは昨年の受賞者、蒼井優さん。「神野さんは私にとって希望の女優さんです。昨年私が受賞した時にこの(着用している)ネックレスをいただき『来年は優からもらうのは私しかいない』って言ってくれて(笑)。素晴らしい先輩にこれからも必死に神野さんにくらいついていけたら」と先輩をリスペクト。

ブロンズ像を渡す瞬間には感極まって涙し抱きあった神野さんと蒼井さん。
神野さんは「大好きな優からこの賞をいただけて幸せです。今日は来れなかった井上芳雄くんから『こんな時だからこそ、演劇のすばらしさを、そして作りあげた人たちの努力をたたえるように過ごしてください』とメールがありました。今日、ここで時間を過ごせばきっと免疫力があがると思います」と笑顔を見せていました。「(組曲虐殺の)栗山さんと(マクベスの演出)V.ベリャコーヴィッチさんには共通点があると思います。それは小さなかき消されそうな声に光を当てて大きなものに戦いを挑む姿。そしてお二人はその表現として演劇を選ばれたということです。この意味を考えながらこれからも続けていきたいです」と決意を述べました。

 

最優秀作品賞はNODA・MAPの「『Q』:A Night At The Kabuki」。
プレゼンターは昨年の受賞者、ケラリーノ・サンドロヴィッチさんは「マスクマスクマスク……凄い景色ですね」と笑いを誘いつつも昨今の新型コロナウイルスの影響を語りました。「昨日一昨日とうちの劇団員が出演する公演が稽古をすべて終えて劇場に入った段階で中止が決まったそうで、泣きながら……いや、メールに(泣)って書いてあったんです。悔しいと。僕らも、はたしてこれは上演できるのかなと思いながら稽古をしている異常な事態です。でも演劇というもののためにこうやってマスクをしながら集まっている事は心強いですし、震災の時にも思いましたが、上演出来る事は当たり前の事ではないんだな、と痛感しています」と現実を見据え、落ち着いたら劇場に足を運んで欲しいとアピール。

受賞した『Q』の作・演出家、野田秀樹さんは現在ニューヨーク公演中のため、『Q』の出演者・松たか子さんが代理で登場。松さんは「野田さんが日本にいないばっかりに、何の間違いか私が受け取らせていただきました。大変名誉なことだと思っております」と照れながら『Q』の稽古から本番までを振り返り「これからも観て良かったなあと思う芝居をやったり、観なきゃ良かったなあと思うくらいの衝撃を持つお芝居に出会えるように頑張ります」と気合いを入れガッツポーズ!!

野田さんからはVTRでメッセージが寄せられました。「9年ぶりにお待ち申しあげておりました。受賞出来て嬉しいです(笑)。今回受賞された方々は皆昔からよく知っている方ばかりなので、嬉しいです。是非そっちに行って喜びを味わいたいのですがこんなことになってしまいました」と笑わせます。大賞・最優秀男優賞を受賞した橋爪功さんについて、「橋爪さんの作品は一度台本を拝見した時『これは橋爪さんがいい』と思って橋爪さんにオファーしたんですが、あの時橋爪さんが断っていたら『Q』が大賞を取れたのでは、と狭い心を持ってしまいました(笑)」と最後まで笑いを忘れない野田さんでした。

 

そして、大賞・最優秀男優賞を受賞した橋爪さんの番となります。舞台『Le Père 父』の演技を評価されての受賞です。
プレゼンターは昨年最優秀男優賞を受賞した岡本健一さんが登壇。「皆さん思っている事かと思いますが賞を取るために仕事をしている訳ではない。そんな事は考えず良い作品を作っていきたいと僕も考えていますが、いざ賞をいただくと自分一人ではなく、キャスト、スタッフいろいろな方に支えられ、そしてお客さんの力でいただいたんだな、と。舞台には人の人生を変える力があり、人と人とのふれあいを感じる場だと思っています」とかみしめるように語っていました。

 

受賞した橋爪さんは「上演してから1年以上経つんですが、よくぞ覚えていてくださいました。野田(秀樹)が何か言ってましたが、確かにこの作品を紹介してくれたのは野田です。ただ彼、いや奴はニューヨークに行っている。一方ラッド(『Le Pere 父』の演出家ラディスラス・ショラーさん)はフランスからわざわざ来てくれた。彼に最優秀作品賞をあげたいなと。今から変更はできないのかと(笑)」と立て続けに毒舌を見せ、「野田は不届きな奴なのでアメリカから出国できないんじゃないかなと」と最後まで落としまくり。最後に奥さまがこの受賞の電話を受けてくれそうですが「『よかったねえ、お父さん』と言ってくれたのがいちばん嬉しかったです。ありがとう弥生!!」と感謝の言葉を口していました。

 

式典の最後はこれまで行われていた祝賀パーティーが新型コロナウイルスの影響もあり、今年はナシに。神野さんの夫であり『組曲虐殺』の舞台でも劇中の伴奏をしていたジャズピアニストの小曽根真さんがピアノ演奏を披露してお開きとなりました。

第27回読売演劇大賞、各賞の受賞作品・人は以下のとおりです。

○大賞・最優秀男優賞
橋爪功 『Le Père 父』の演技

○最優秀作品賞
『Q』:A Night At The Kabuki(NODA・MAP)

○最優秀女優賞
神野三鈴 『組曲虐殺』『マクベス』の演技

○最優秀演出家賞
松本祐子 『スリーウインターズ』『ヒトハミナ、ヒトナミノ』の演出

○最優秀スタッフ賞
服部基 『チャイメリカ』『組曲虐殺』の照明

○杉村春子賞
菅田将暉 『カリギュラ』の演技

○芸術栄誉賞 『キャッツ』劇団四季

○選考委員特別賞
岡田利規 『プラータナー:憑依のポートレート』の演出

・優秀作品賞
『Le Père 父』
『人形の家 PART2』
『スリーウインターズ』
『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』

・優秀男優賞
菅田将暉
平田満
水谷貞雄
山西惇

・優秀女優賞
枝元萌
クリスタル・ケイ
増子倭文江
若村麻由美

・優秀演出家賞
瀬戸山美咲
野田秀樹
蓬莱竜太

・優秀スタッフ賞
笠原俊幸
鈴木光介
塚原悠也
土岐研一

(2020,03,02)

photo&text:Saki Komura

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