太鼓芸能集団 鼓童の創立40周年特別企画『巴』『鼓』『童』の3作品が、11月25日(木)から28 日(日)の4日間、東京・Bunkamura オーチャードホールで上演されます。

鼓童は1981年、ベルリン芸術祭での鮮烈なデビュー以来、世界52カ国で6,500回以上の公演を重ね、現在、日本のプロフェッショナルの芸能団体として最も数多くの海外公演を行っています。今回鼓童創立40周年特別企画として、4日間で3作品を見ることができる特別公演を前に、演出の船橋裕一郎さん、そしてプレイヤーとして全作品へ出演する新山萌さんに公演への想いをうかがいました。

 

ー40周年公演を行うと決めた思いを教えてください。
船橋さん「40周年という節目にオーチャードホールという素晴らしい劇場でこれまで積み上げてきたものを土台に、鼓童の未来を予感させるような公演をしたいと考えました。お客さまもいろいろな舞台をご覧になりたいと思ってくださっていると想像し、今上演しているツアー作品や昨年浅草での上演が叶わなかった公演『巴』を復活させて、お客さまに楽しんでいただきたいと企画しました」

 

ー今回上演される『鼓』『童』は最初に鼓童をつくった人たちの思いを大切に、『鼓』は太鼓に、『童』は人に焦点を当てた作品、『巴』は今回世界初のお披露目とお聞きしました。それぞれどのような公演になりそうですか?
船橋さん「この3作品には創立当初から鼓童を創ってきたメンバーがそれぞれ出演し、3作品共通して鼓童のダイナミックさをご覧いただけると思います。また、三百張り以上の提灯が舞台に登場します。この提灯は協賛いただいたお客さまのお名前が入ったものになります。『鼓』は、鼓童のストイックな部分を強調し、『童』は太鼓の童たちを自由に羽ばたかせています。『巴』は、在籍30年を迎え、鼓童の心・技・体を表す見留知弘を中心にした舞台を届けたいと思っています。どの作品も鼓童の魅力を存分に入れたものになっていますので、それぞれ作品の魅力を楽しんでいただけます」

ーそれぞれ魅力的な公演になりそうですね!!3作品すべてに出演される新山さんのここをみて欲しいというところを教えてください!!
新山さん「『鼓』では、「この峰の」という佐渡の景色をイメージした唄を歌わせていただきます。『童』では、「興(おこし)」という曲で佐渡の方から学んだことや感じたことを表現できることがすごく楽しみです」
船橋さん「『巴』では「千里馬(ちょんりま)」ですね。今回この曲を3人で演奏する編成にしていて、ストイックな感じでやっていくので、注目の演目になると思います」

 

ー今回の記念公演では、創設メンバーの方も出演されますね!!
新山さん「そうですね!!今回初めて舞台をご一緒する大先輩もいるので本当に楽しみですし、最初で最後という気持ちで楽しみたいです(笑顔)」

ー新山さんが鼓童に入りたいと思ったきっかけを教えてください。
新山さん「太鼓は習っていましたが、あまり好きではなく、どちらかというと習い事としてやらされているという感覚でした。小学生のときに、初めて鼓童の公演をみて、太鼓の概念が変わりました!!そこから太鼓がすごく好きになり、将来のことを考える時期に、やっぱり鼓童に挑戦してみたいという気持ちが大きくなりました」

 

ーそこからどのような過程を経て鼓童のメンバーになったのでしょうか?
新山さん「高校卒業後に研修所に入り、2年間の研修生活を過ごし、そこから選考があり、準メンバーを経て、メンバーになり現在2年目を迎えています」

 

ー幼い頃から憧れていた鼓童のメンバーとして舞台に立てた今、どんな気持ちを持っていますか?
新山さん「鼓童に入るということをずっと目標にしていました。実際にメンバーになることができ、この先自分がどうやっていきたいのかを考えるようになりました。太鼓の活動を続けていくのであればずっと鼓童でやっていきたいという気持ちは変わっていません」

ー幼い頃から鼓童に入りたいという思いを持った新山さんが新しいメンバーとして加わることで変化を感じることはありましたか?
船橋さん「太鼓の文化が、自分たちが子供の頃よりも広がっていることを感じますね。子供の頃から太鼓を習って、鼓童を見て、そこを目指してくれる子達がたくさんいてくれて、入ってきてくれる時点で僕たちの新人の頃よりもはるかに上手な子達が多いです。その土台の上で僕たち鼓童の公演が作れるということはありがたいことです。これからもいろいろなことを恐れるのではなく、新たなチャレンジをし、太鼓の可能性を広げていってくれることを期待しています」

 

ー公演を拝見すると鼓童の皆さんが太鼓を楽しんでいらっしゃるのがすごく伝わってくる感じがります。船橋さんが公演を作っていく時に意識されていることはどんなことでしょうか?
船橋さん「音に対するこだわりがありますので、自分たちの良い音がお客さまにとってどうだろうか。どう聞こえるのかを意識しながら、今出せる一番良い音とは何なのかということを意識して作品や音を作っています。葛藤や悩みもたくさんそれぞれにありますが、舞台に立った時には、真っ新な気持ちでお客さまに音を届けられたらいいなと思います。みんな太鼓を叩き始めると楽しいんですよね(笑顔)。自然と笑顔になりますし、そこがお客さまと共感している部分なんだと思います」

 

ー楽譜を見るというよりも、音を覚えながら稽古を重ねて完成度を上げていく中で苦労していることはありますか?
新山さん「難しいなと感じるのは先輩との音のギャップです。理解しているけれどどうしたらその音が出せるのかというところが一番難しいですね。「モノクローム」という曲が一番難しくて、ベテランの方の音にどう近づけていくのか。。。先輩にも日々積み重ねていったものがあるので、すぐにできるものではないと思います。でもそのギャップを感じながら舞台で一緒に演奏するのは、大変ですが楽しいことでもあります。先輩がちょっと発した言葉も、聞き逃さずに取り入れて練習稽古をし、今までと違う音が出ると嬉しくて…、そこが太鼓って楽しいなと思える瞬間ですね」

 

ーご自身の成長を感じながら、厳しいお稽古を重ねているという感じですね!!
新山さん「そうですね!!それを感じられないと辛いですよね。初めて「モノクローム」の稽古をした時は震えてしまい、その時のことは今でも忘れられないです」

 

ーこうやって苦労と成長を重ねていく新山さんの今後の成長が楽しみですね!!
船橋さん「本当に楽しみです(笑顔)。震えてると言っていましたが、僕らが最初に入った頃と比べたら、よっぽどすごいですよ。僕らはもっとひどかったと思います(笑)。その頃は本番に何をやったか覚えていないくらい震えてましたね。舞台度胸は僕たちよりあるなって感じています。今は若干ですが舞台の数が少なくなってきているので、本番で鍛えられるところを増やしていけるともっと良くなっていくと思います。今こうやって新山もいろいろな作品に出演できるので、たくさんの方にご覧いただけたらと思っています」

ー船橋さん、新山さんご自身が感じる鼓童ならではの魅力とは?
新山さん「学生の頃に鼓童の公演を見た時には、音に注目はしていませんでしたが、鼓童に入っていざ自分が演奏していく中で、鼓童が大切にしていることを肌で感じるようになり、やはり音が良いというところが魅力だと思います。演奏を目で楽しみながらもやっぱり耳で聴いて楽しんで欲しいです」
船橋さん「鼓童はすごくシンプルであるということが強みです。シンプルでありながらも、約2時間の公演を演奏し続けて、お客さまと一緒に楽しむことができるというところです。そこにたどり着くためには、それなりの訓練を重ねてきています。そのシンプルの中にある、奥深さを感じていただけると嬉しいです。それは佐渡で長年積み重ねてきた結果だと思います。派手な照明や舞台転換があったりということではなく、シンプルに音だけで見せて、聴かせていくことを大切にしていきたいです」

 

ー新型コロナウィルスの影響で公演ができない期間が続きましたが、ご自身の考え方に変化はありましたか?
新山さん「太鼓について深く知る時間になりました。しばらく太鼓を打てない時間があり、太鼓ってこんなに身体全体で感じるものなんだと実感しました。そして、今までは、自分がどうしたら良いかという考えが先にたっていましたが、久しぶりにお客さまの前で公演をすることになった時に、お客さまに心から喜んでもらいたい。コロナ禍でネガティブになっている方には公演を観て元気になって帰ってもらいたいと強く強く思いました。そこからは自分中心の演奏ではなく、お客さまに向けた演奏に変わっていくことができたと思っています」
船橋さん「コロナ禍で活動ができなかった期間で、本当に多くの方に支えていただいていたということを改めて実感しました。そして多くの時間を佐渡で過ごし、改めて佐渡の魅力を感じることができました。また、若いメンバー中心にいろいろなことにチャレンジし、配信やラジオをやったり、音源を録り溜めたりと蓄える時間になったと思います。そこで蓄えたものが今回のオーチャードホールでの公演の中に込められていますので、ご覧になっていただけると嬉しいです。お客さまあっての自分たちの演奏なんだと実感したメンバー達ですので、蓄えたパワーを皆さんにお届けし、ご覧いただいた皆さんに明日も頑張ろうという気持ちを持っていただけたら嬉しいです」

 

ー改めて、船橋さんから見た新山さんのプレイヤーとしての魅力を教えてください。
船橋さん「研修生の頃から太鼓は上手だと思っていました。それが今、磨きがかかっています。太鼓だけでなく、唄や踊り、ユーモアのある演目に今回チャレンジしています。しっかりとした芯を持ちながら柔軟性があるので、悩みながらもいろいろな表現を開拓しています。この発展途上にある新山萌をぜひご覧いただきたいです。鼓童は同じ衣裳を着て演奏するので、比較的誰がどこにいるのか分かりにくいところもありますが、全作品出演していますので、彼女の魅力的な部分を探していただくのも今回の公演を楽しめるポイントでもあると思っています」

 

ーそれでは、新山さんから見た船橋さんの魅力をお願いします。
新山さん「裕さんの演奏はビデオで何度も観るくらい好きです。大きい太鼓を1本のバチで叩く曲があるのですが、それは本当に何回も観ちゃいます(笑顔)!!安心感と安定感があります。一緒にいるだけで安心できる存在です」

ー船橋さんは今回3作品すべての演出を担当されます。プレイヤーとして臨む公演との違いを教えてください。
船橋さん「プレイヤーとしての公演は演奏することが単純に楽しいですね。演出をするということは自分のすべてをさらけ出す感じがあって、苦しむ部分もたくさんありますが、プレイヤーとはまた別の楽しみ、面白さがあります。本番前に寝れない日が続いたり、緊張することはありますが、お客さまが喜んでくださり、演奏者それぞれが何かに挑戦できる場を自分で作り出していけることは、とてもやりがいのあることだと思います。演奏することも演出することもどちらも楽しんでいきたいです」

 

ー太鼓に対する想いは、演出をすることで変わりましたか?
船橋さん「自分が(太鼓を)打っている時は、自分がどういう音を出したいのかすごく考えていましたが、今は、お客さまがどう感じるかということをすごく考えます。演奏者は、ここを伸ばしたいとかアピールしたいところかなと思う時もありますが、お客さまがどう感じるかが大切なので、あっさりと“そこは止めて”とか“短く”と指示を出しますし、ここはもっと欲しいなというところでは、“そこはもっと伸ばして”と指示をしています。そう意味では視点がすごく変わりました」

 

ー視点が変わっても太鼓の魅力は変わりませんね!!
船橋さん「太鼓もそうですが、鼓童も奥が深いので、可能性がすごくあると思っています。ここで終わりではなく、もっともっと可能性を広げていきたいです。たくさんの方に太鼓の音を聴いて元気になっていただくことが、僕たちの次への原動力につながっていくと思っています」

 

ー最後にこれからのご自身の挑戦と読者の皆さんへメッセージをお願いします。
新山さん「まずは、この40周年の公演を4日間しっかりと頑張ります。常に向上心を持って活動を続けてこれからもずっと鼓童で太鼓を打っていけるプレイヤーになっていきたいです。佐渡でしかできなかったこと、佐渡で感じたこと、学んだことが詰まった公演です。会場で佐渡の風を感じていただきたいです」
船橋さん「40年積み重ねてきたものは、私としては先輩から預かっているものだと思っています。この活動をまた次の世代のメンバーが引き継いでいける環境を作り、次の10年に向けてより頑張っていきたいと思っています。今回の公演で、鼓童の音を聴いていただき、明日も頑張ろうと思ってもらいたいです。その音はお客さまと一緒に作っていくものです。共感していただき、一緒に歴史を作っていただけると嬉しいです」


【profile】
船橋裕一郎/Yuichiro Funabashi
1974年5月9日生まれ。神奈川県出身。
太鼓芸能集団 鼓童 代表。考古学を専攻していた学生時代に太鼓に出会う。1998年に研修所入所。2001年よりメンバーとして舞台に参加、太鼓、鳴り物、唄などを担当する。これまでに「アース・セレブレーション」城山コンサートや、2018–2019年「道」、2019年鼓童浅草特別公演「粋」、2020年「鼓」、2021年「童」公演の演出のほか、「BURNING」などの作曲も手掛ける。交流学校公演、海外での共演など様々な分野を牽引。また落語やプロレス観戦など様々な趣味を持ち、柔らかな口調と人情味溢れる人柄でメンバーの頼れる相談役である。2012年より副代表、2016年1月より代表に就任し、グループを率いている。

 

新山萌/Moe Niiyama
1998年8月28日生まれ。埼玉県出身。
3歳から太鼓を始める 。2017年研修所へ入所。2019年準メンバー、2020年より正式メンバー。
舞台では太鼓、唄、笛を担当。女性としての力強く芯のあるパフォーマンスを目指している。

photo:Hirofumi Miyata/interview&text:Akiko Yamashita


【公演概要】
■タイトル
特別企画 鼓童創立40周年記念公演 『巴』『鼓』『童』
■日程・会場
2021年11月25日(木)〜11月28日(日) Bunkamuraオーチャードホール
■演出 船橋裕一郎
■出演
□『巴』/25日(木)15:00、28日(日)13:00
特別出演:見留知弘
齊藤栄一、中込健太、住吉佑太、地代純、鶴見龍馬、米山水木、前田順康、木村佑太、平田裕貴、三枝晴太、中谷憧、新山萌、定成啓
□『童』/26日(金)14:00、27日(土)17:30
特別出演:鼓童名誉団員 藤本吉利(11/26)、藤本容子(11/27)
齊藤栄一、中込健太、小松崎正吾、住吉佑太、地代純、三浦康暉、池永レオ遼太郎、北林玲央、前田順康、三枝晴太、山脇千栄、新山萌、野仲純平
□『鼓』/26日(金)18:30、27日(土)13:00
特別出演:鼓童名誉団員 小島千絵子(11/26)、山口幹文(11/27)
齊藤栄一、中込健太、三浦康暉、地代純、池永レオ遼太郎、米山水木、北林玲央、木村佑太、平田裕貴、山脇千栄、中谷憧、新山萌、定成啓、野仲純平
※出演者は変更になる場合がございます。
■公式ホームページ
https://www.kodo.or.jp/
▼公演詳細はこちら▼
https://www.kodo.or.jp /performance /performance_kodo /2843

(2021,11,19)


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