ドリームワークスによるアドベンチャーコメディ映画『シュレック』を2008年にブロードウェイでミュージカル化した『シュレック・ザ・ミュージカル』が、2022年8月15日(月)から東京建物Brillia HALLで、日本初上演されます。

今作は、「仲間との絆」や「真実の愛」「困難に立ち向かう」という普遍的テーマを、ジョークやパロディ満載で描いた映画を元にしたミュージカル。今回の公演では、全キャストをオーディションで選出。

実に1300通を超える応募の中から主人公・シュレックにspiさんが選ばれました。今回、spiさんにオーディションを受けるに至った経緯や本作の魅力、さらにはファッションについて聞きました!!

 

―オーディションを受けようと思ったきっかけを教えてください。
完全に母の影響です。俺、めちゃくちゃ売れているので(笑)、すっごく忙しいんですよ。なので、スケジュールに余裕があるわけではなかったんですが、母から“シュレックのオーディションがあるよ”と電話があって、“受けて欲しい”と。忙しいし、スケジュール的にも厳しいと伝えたんですが、でも、受けないと後悔するかもしれないと思ったんです。それで、一晩考えて、受けることにしました。

 

―お母さまがspiさんにこの作品のオーディションをオススメしてきたのはどんな理由からだったんでしょうか?
きっと、勘が働いて、(spiさんに)合うと思ったんじゃないかなと思います。例えば『ロミオとジュリエット』のような大作もロミオならば黒羽麻璃央の方が断然合っている。そうなると、俺が主演をできる作品は、“モンスター系”しか残ってないんですよ(笑)。それならシュレックは絶対にやって欲しいという思いが母にあったんだと思います。

―ご自身でも、この作品なら自分だと?
最初は全く思ってなかったんですよ。自分のことはキラキラ王子様だと思っているから(笑)。でも、“規格外”というのが俺の日本の中での活動のテーマのひとつでもあるので、“規格外”ということで考えればシュレックはまさにそうだなと感じるようになって、それなら自分にも合うのではないか、と。

 

―オーディションでは、手応えはありましたか?
先ほども言ったように、とにかく忙しかったので、その中で曲を覚えて、動画を撮って送らなければならず、あまり深く考えることはできなかったんです。なので、“今、僕が持てる力はこれです、こういう歌唱力です、こういう表現力です。いかがですか?”という感じでした。シュレックに寄せようとか、シュレックだからというところまで考えることはできなかったんです。その後、二次審査では(スタッフの方々と)お会いして、その場で歌ったのですが、その時は、自由に歌って欲しいという要望があったので、自由に歌わせてもらいました。手応えというとどうかは分かりませんが、受かったことが分かった時はもちろん嬉しかったですし、ありがたかったです。きっとシュレックをやりたいと思っている人もたくさんいたと思うので、そういう人たちの想いも背負っていい作品にできたらと思います。

 

―オーディション以前に、原作の映画はご覧になったことがありましたか?
観てました。シュレックの声優をやっていたマイク・マイヤーズさんが大好きなんですよ。ドンキーのエディ・マーフィーさんも好きですし、CGもすごくて大好きな作品です。

 

―シュレックというキャラクターについてはどんなイメージがありましたか?
映画を観ての感想というよりは、役作りの話になってしまいますが、とにかく孤独でブサイクで嫌な奴で臭くて、美的感覚が他の人と違うというイメージです。社会からは、その姿を“汚い”と言われてしまうし、シュレックも自分の価値観がフィットしないことに気づいて卑屈になっている、そんなキャラクターです。

―台本を読んで、映画のイメージから変わったところはありますか?
(ミュージカルの方が)映画よりもそれぞれのキャラクターの背景を説明してくれている印象はあります。なんでそう思っているのか、どんなコンプレックスを持っているのかというキャラクターたちの気持ちが音楽に合わせて表されているので、映画よりも人間味のあるものになっていると感じています。きっとミュージカルの方がより人間として共感できる部分が散りばめられていると思います。
シュレックもより共感できるキャラクターになっています。俺は、骨格が良いし、歌も上手いし、男前だし(笑)、シュレックとは違う方向で飛び抜けていますが、やっぱり子どもの頃は周りと馴染めないというコンプレックスはありました。どこか飛び抜けた人物というのは、良くも悪くもマイノリティーなんですよ。シュレックもマイノリティーで、それを突き詰めた結果、社会が認めてくれないならば一人で過ごすんだ、独身でいいんだと思っている。今、社会にも同じように思う人はいっぱいいると思います。でも、どんな人でも、一人でいいとか孤独が好きだと言っている人でも、実は誰かと繋がりたいと思っているんです。そういう意味で、共感できるキャラクターを作れるんじゃないかなと思います。

 

―シュレックの特殊メイクもすごいとも聞いています。
そうなんですよ。口と目以外は、全て“緑”で覆うらしいので、メイキングは面白いんじゃないかなと思います。熱中症が怖いので、どうやってそれを避けるかが課題ですね(苦笑)。でも、これまでもいろいろとかぶってきましたから、大丈夫なんじゃないかなと思います。

―今作の楽曲についても教えてください。
作曲のジニーン・テソーリの楽曲は、めちゃくちゃポップで最高のものばかりなので、楽しめると思います。今回はトライアウト公演なので、カットされてしまっている曲も短くなっている曲もあるので、それは本当にもったいないのですが、それでも十分に味わっていただけると思います。歌詞も、英語のウィットに富んだ英文をきちんと訳してくれているので、最先端のものになっていると思います。英語が変な日本語になっちゃってるミュージカルではないです(笑)。

 

―そんな本作で、spiさんしか出せない“らしさ”はどういったところで出していこうと考えていますか?
というか、シュレックって俺以外に誰かできるんですか(笑)?あまりイメージがつかないですよね?なので、俺がやるということだけで、spiになるんだと思います。ただ、映画と違うのは、今回、シュレックは標準語で話します。標準語で表現することで、このミュージカルならではのものになるのではないかなと思います。

 

―初共演の方も多いと思いますが、共演者の方々の印象は?
皆さん、センスがすごいです。演出から“こんな感じでやりたい。こういう絵なんだ”と伝えられると、みんな、Wi-Fiで繋がってんのかってくらいすぐに通じる(笑)。とにかくその理解力というか、言われたことをキャッチする力がすごいので、作りあげるのにそれほど時間がかからないと思います。

 

―それは、全員がオーディションだからということも関係しているんですかね?
関係してるんじゃないですか。ハングリーでアンテナ張ってる人たちばかりということなんじゃないかな。だから、やりやすいです。

―ところで、本作のように原作がある舞台とオリジナルの舞台では、演じる上ではそれぞれにどんな違いを感じていますか?
オリジナル作品は、0から1を作る作業になりますが、それは演出家さんや脚本家さんの“見たい絵”を具現化していく作業になると思います。原作がある作品は、それに加えてヒントが多い。やはり原作から得るものが多いので、それをいただいた上で作っていくという感覚です。ただ、完全にコピーするというよりも、原作を大前提とした上で作っていく感じです。原作がある方が作るのは早いと思います。

 

―原作がある場合には、いわゆる原作に寄せる作業もあるかと思いますが、あまりそれにとらわれているわけではない?
原作とイメージが違うとか、解釈が違うとかということもあるんだとは思いますが、でも、それはキャスティングの問題です(笑)。俺のせいじゃないんで、気にせずやっています。そう思うなら、俺を使うなって(笑)。

 

―なるほど(笑)。ところで、今回は、こども向けのチケットも発売されますので、本作で初めてミュージカルを観るという子どもたちも多いと思います。
大勢の子どもたちに観てほしいですね。ビジュアルが面白い強烈なキャラクターがいっぱい出てくるし、衣裳もセットも華やかですし、楽しめると思います。それに、おならやゲップという、子どもたちが好きな笑いもいっぱい入っているので、たくさん笑ってもらえる作品になっているとも思います。(子どもたちを劇場まで)連れてくる大人たちももちろん、楽しめる作品です。絵本を読み聞かせしていたら、大人が感動してしまったということってあるじゃないですか。そういうことが起きる作品だと思います。

 

―子どもたちが楽しめる、本作の見どころは?
おならです(断言)。

―ありがとうございます(笑)。最後に、公演を楽しみにされている方にメッセージを。
普遍的な、共感できる部分がキャラクター全員にあります。虐げられてきたもののアンチテーゼでもあり、見た目至上主義に物申す物語です。その上で、自分らしく生きることが幸せなんだと伝えられたらと思います。ご家族で来られる方が多いと思うので、子どもたちにはケラケラ笑ってもらって、大人たちは感動していただけるような、そんな楽しい作品になるんじゃないかなと思います。


▶︎spiさんのファッション事情◀︎
―今日の衣裳のポイントを教えてください。
今日は自前の服ですが、シンプルな組み合わせをしています。普段からシンプルな服装が多いですよ。マスクを腕に着けていますが、これは新しい提案です(笑)。

―最近のお気に入りアイテムは?
最近は、今までなかった生地の服が増えてきましたよね。例えばノーアイロンでもシワができないシャツとか。そういうのはよく買っています。この間は、ZARAでスカーフ生地のシャツを買いました。

 

―この夏、挑戦したいことは?
やりたいことはたくさんありますが、なかなか忙しくてできないんですよ。休みの日も寝るだけ。運動不足になると体調不良になるのが嫌でジムには行っていますが、それくらいかな。食事には気を遣っていて、白米は食べないようにしていますが、それも繊細だから(笑)。最近は、大豆ミートを初めて食べました。乾燥したそぼろのような感じで、タコライスにしたら美味しかったです。

 

―村井良大さんが以前、本誌に登場した際に、spiさんのことを「今、絶対に観ておいた方がいい役者。歌もダンスも芝居も同年代で一番できるんじゃないか」とおっしゃっていました。ご自身の中ではどんなところがイケてると思いますか?
全部に決まってるじゃないですか(笑)。今、俳優として一番エネルギーあるし、歌も抜群だし、体もいいし、顔も男前だし。自分では、千葉真一さんの再来という気持ちでやらせてもらってます。…(急に真顔になって)いや、どうだろう…髪型かな? 髪型がイケてます(笑)。

【profile】
1987年10月30日生まれ。神奈川県出身。
5歳のころから米海軍のシアターグループに所属。子役として数々のオペラやミュージカルに出演し、演技や歌唱の基礎を築く。また、横須賀少年少女合唱団に参加後、ボーイソプラノ・ソリストとして幅広い音楽に触れる。現在は、舞台に数多く出演するほか、歌手としてライブ活動も精力的に行っている。近年の主な出演作に、ミュージカル『オリバー!』(ジャン・ピエール・ヴァン・ダー・スプイ演出)『刀剣乱舞』シリーズ(茅野イサム演出)『ジャージー・ボーイズ』『VIOLET』『手紙2022』(藤田俊太郎演出)などがある。2021年佐藤流司、福澤侑、心之介と音楽パフォーマンスユニットZIPANG OPERAを結成し活動中。今年10月には3度目となる『ジャージー・ボーイズ』への出演も控えている。


【公演概要】
■タイトル
『シュレック・ザ・ミュージカル トライアウト公演』
■日程・会場
2022年8月15日(月)~8月28日(日) 東京建物Brillia HALL
■原作 ドリームワークスアニメーション『シュレック』/ウィリアム・スタイグ『みにくいシュレック』
■脚本・作詞 デヴィッド・リンゼイ=アベアー
■作曲 ジニーン・テソーリ
■翻訳・訳詞・音楽監督 小島良太
■演出 岸本功喜
■出演
spi 福田えり 吉田純也 岡村さやか 須藤香菜 新里宏太 鎌田誠樹 鈴木たけゆき 熊澤沙穂 岩﨑巧馬 大井新生 澤田真里愛 石田彩夏 大村真佑 小金花奈・矢山花(Wキャスト)/泉見洋平
■主催・企画・製作 フジテレビジョン/アークスインターナショナル/サンライズプロモーション東京
■公式ホームページ

https://www.shrek-musical.jp

(2022,08,12)

photo:Hirofumi Miyata/interview&text:Maki Shimada

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