1975年にニューヨークで伝説的なダンサーであり振付家のマイケル・ベネットさんにより生み出された『コーラスライン』は、オーディションを受けに来た男女が舞台上で歌と踊りによって自身の人生を語り、表現していく物語で、現在まで語り継がれるミュージカルの金字塔となっています。今回の上演は、演出のニコライ・フォスターさん、振付のエレン・ケーンさんが、マイケル・ベネットさんの精神を受け継ぎつつ、ドラマを深く掘り下げた最強版で、演出家・ザック役をアダム・クーパーさんが務めます。

 

ニコライさんは、新演出について「今回、私たちは演出、振り、照明、デザイン、あらゆるところを新しく解釈するという機会をいただきました。その中で、21世紀というレンズを通してこの作品を見ていくということに着目し、この作品がコンテンポラリーな世界の中でどう生きるかといういうことを我々は探っていきました。この作品の中で見られるテーマ、セクシャリティや演出家や役者というヒエラルキーというものを今のお客さまにどう伝えるかということを大事にしながら作ってまいりました」と説明。

本作の演出で難しかった点を聞かれると、「オリジナルがとてもいい作品なので、それに見合う新しい演出、新しい振り付けというものが僕たちは提供できるのかという不安はありました。新しい解釈としてフレッシュな目でみたいと思いつつ、マイケル・ベネットへのリスペクトがあります。彼はただの演出家、振付家ではなく、歴代の中でもっとも偉大といっても過言ではない人なんです。なので、私たちはそこまでたどり着けるのだろうかというのが1番の難題でした」と明かしました。

 

続いてアダムさんは、本作について聞いた時を振り返り、「話を聞いたときは、すごくワクワクしました。そもそも僕自身も映画版を観て育ちましたし、2013年にはロンドンで上演されたオリジナルのリバイバルも拝見させていただきました。変わらずに面白みのある作品ですが、やはり時代性という意味では少し遅れを取っているため、作品の良さが薄まっていると感じていたので、ニコライが新しいバージョンの演出をし、振り付け、音楽アレンジも変わると聞いてすごくすてきだなと思いました。良い作品、例えばシェイクスピアなども、いろいろな解釈をされています。それならば、良いミュージカルもどんどん新しく解釈されていくべきだと感じているので、（出演できることが）とてもうれしかったです」と楽しそうに話しました。

 

2024年には、天海祐希さんとの舞台『レイディマクベス』にマクベス役で出演し、日本語プロダクションにも参加した経験を持つアダムさん。日本の演劇と世界の演劇について話が及ぶと、「『レイディマクベス』は新作でしたし、言語もあって理解に時間がかかりましたが、演劇というものは普遍的で、どの国も共通のものなのではないかと思います。我々の目的としては、人を動かす物語を作り出すことだと思っています。僕はこれまでさまざまな国でお仕事をさせていただいてきましたが、意義のある、そして作品に対してきちんと正義を果たすということはどこの国に行っても変わらないです」とコメントしました。

 

会見の最後に、ニコライさんは改めて「僕は初めて日本に来ましたが、日本の文化に触れて、この国にこの作品を持ってくることができて本当に光栄に思っております。この作品には、美しさがあるだけでなく、知性、そして人間らしさが描かれております。プロデューサーさんから『ピーター・ブルックみたいだね』といっていただきましたが、偉大な方と自分を比べようなんて思ってもいませんが、何もない空間という意味では近しいものがあるのではないかと思います。そうした品のあるプラスチックな感じにお客さまが反応を示してくださることを期待しております。アダムだけでなく、素晴らしいアーティストがたくさん揃っていますので、ぜひ楽しみにしていただけますと嬉しいです」と思いを語りました。

 

そして、アダムさんは「とても素晴らしい体験をしていただけると思います。僕自身、舞台の上で毎日、素晴らしい才能をに目の当たりにする喜びを感じております。オリジナルプロダクションと同じくらい、なんだったらもっと素晴らしい作品になっていると思いますので、ぜひ楽しんでいただければ」とアピールして締めくくりました。

【公演概要】
■タイトル
ミュージカル『コーラスライン』日本特別公演
■日程・会場
日本プレミア公演：2025年9月8日(月)〜9月22日（月）　東京建物 Brillia HALL
仙台公演：2025年9月27日(土)・28日(日)　仙台サンプラザホール
大阪公演：2025年10月2日(木)〜10月6日(月)　梅田芸術劇場メインホール
東京凱旋公演：2025年10月10日(金)〜10月19日(日)　シアターH
■原案・振付・演出　マイケル・ベネット
■演出　ニコライ・フォスター
■振付　エレン・ケーン
■出演
アダム・クーパーほか

(2025,09,09)

photo&text:Maki Shimada

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