南フランスのナイトクラブを舞台に、ゲイカップルの夫婦愛と、その一人息子への愛情をめぐって巻き起こる珍騒動を通して愛の尊さ、温かさをハートフルに描いた傑作ミュージカル『ラ・カージュ・オ・フォール』が、2022年3月8日(火)から日生劇場で上演されます。
主演を務めるのは、2008年の公演以降、最強コンビとしてたくさんの愛を届けてきた鹿賀丈史さんと市村正親さん。これまで、2008年、2012年、2015年、2018年に公演を行い、連日、スタンディングオベーションで迎えられるなど、大好評を博しました。
鹿賀さん演じるジョルジュと、市村さん演じるザザの息子ジャン・ミッシェルを演じるのは内海啓貴さん。

ミュージカル『GREASE』ではドゥーディー役をとびっきりキュートに愛らしく演じてその実力を見せるなど、話題作に次々と出演されています!!
そんな内海さんに、本作への熱い想いや意気込み、さらにはミュージカル俳優としての在り方をお聞きしました!!

―まずはじめに、本作への出演が決まったお気持ちからお聞かせください。
「『ラ・カージュ・オ・フォール』という歴史ある作品に、鹿賀丈史さん、市村正親さんという素晴らしい先輩方と共演させて頂けるなんて嬉しくて夢のようでした。その嬉しいという気持ちとともに大変緊張もしました。そして楽曲を聴かせて頂いて、素敵な曲ばかりで、ぜひ出演したいという気持ちがどんどん大きくなりました。(出演が)決まった時は本当に嬉しかったです。今から公演が楽しみです」

 

―この作品は、トニー賞をはじめ、数々の受賞歴を誇り、日本でも再演を重ねている大人気作です。内海さんは、この作品が愛されている理由はどこにあると感じていますか?

「僕はこの作品が持っている様々な“愛”だと思います。家族の絆や愛が楽曲やセリフ、ダンスにも散りばめられていて、観終わった後にとても幸せな気持ちになれます。それに加えて、最後はハッピーエンドで終わるという王道ミュージカルではあるのですが、その中にいい意味で“異色な華やかさ”もあります。その“異色の華やかさ”は、市村さんが演じるザザが表現する女性よりも女性らしい“愛”にあると僕は思っています。それは、この作品ならではのもので、そこにはいろいろな色の愛が存在していて面白いなと感じました」

 

―今現在、内海さんが演じるジャン・ミッシェルはどのような人物だととらえていますか?

「台本がこれからですので、細かいところは今後作っていくことになると思いますが、すごく素直に育っている人だなと感じました。なので、その素直さは出していきたいと思います。ただ、ジャンは自分の家族は友達たちの家族とは違うとも思っています。そして、そこに引っかかっている。僕自身も、普通がいいなと思う時期もありましたし、人と自分を比べてしまったこともあったので、そこは昔の自分とリンクさせながら作っていけたらいいなと思います」

 

―ジャンは内海さんご自身と似ている部分はありますか? 素直なところとか?
「あはは、そうですね。素直なところは似ていると思います(笑)」

 

―鹿賀さんと市村さんの俳優としての印象は?
「お二方とも、最初に舞台の上に立っている姿を拝見したときは、衝撃でした。立っているだけでその役の歴史が滲み出ていて、セリフを言わずとも、歌わずとも、そこにいるだけで役が存在しているすごさがありました」

 

―お二人と共演することで、どんな成長をしたいと思っていますか?
「これまでも、僕はたくさんの偉大な先輩方と共演させていただきましたが、その先輩方は皆さん、舞台の上だけでなく稽古場での佇まいや、お稽古をしていない時の過ごし方もかっこいいんですよ。カッコつけているとかそういうことではなく、役に対する姿勢や作品への向き合い方が素敵で、これまでもたくさん学ばせていただきましたので、鹿賀さんと市村さんとご一緒することで、稽古場でのお姿からもたくさんのことを学ばせていただけるんだろうと楽しみにしています。でも、正直なところ、あまりにも偉大な方なので、とても緊張もしています(苦笑)。これまで若さでなんとか乗り越えてきたので、今回も若さとガッツでぶつかっていきたいと思います!!」

 

―今作で挑戦だなと思っているところは?
「もちろん、そうした偉大な先輩方に囲まれて、初めて挑戦する役、作品に臨むということ自体が挑戦です。フレッシュな僕にしかない色を出せたらいいなと思っています。それから、今回、初めて日生劇場に立たせていただけるので、それも僕にとっては新たな挑戦です」

 

―恋人・アンヌ役の小南満佑子さんとは今回、初共演ですね。
「ビジュアル撮影でお会いしましたが、緊張しました。そのときは、首の角度をどこまで倒して撮影するのが良いかって、首の話ばかりしていたので(笑)、これから作品や役に対しても話し合っていけたらと思います」

 

―現在(取材時)、ミュージカル『GREASE』に出演中ですね。歌もダンスも華やかなハッピーな作品で、内海さんにとっても学ぶことも多かったのではないかと思います。『GREASE』でのどんな経験が本作に活かせると感じていますか?
「『GREASE』では10曲以上も歌っているので、そういった作品でロングランの公演を行えたことは体を慣らすという意味でも良かったなと思います。日々、ケアをしながら体を整えることの大切さも改めて気づきました」

 

―具体的にどのように体のケアをしているんですか?
「すごく細かいことですが、寝る前に部屋の湿度を調整したり、毎日、柔軟をしたり、あとはマッサージ機を使って体をほぐしたりしています。それから、ダンスをすると足がパンパンになってしまうので、最近は、お風呂に入った後に、足を冷水につけてアイシングしています。そうすると、翌日が楽になるので」

 

―毎日のケアが大切なんですね!! メンタル面では、どのようにしてテンションをキープしていますか?
「音楽を聴いています。僕のおじいちゃん、おばあちゃんは地元でスナックをやっているので、僕は昔から歌謡曲が大好きなんですよ。『GREASE』の公演中は、僕の楽屋では「赤いスイートピー」が流れてました(笑)。歌謡曲を聴くと落ち着くんですよ。僕のルーツです!!それから、やっぱり仲間がいるというのが大きいと思います。僕は、(仲間に)何でも相談するし、相談も受けるし、自分の中でためておくのが嫌なタイプなので、落ち込んだり、悩んだりしたときは、誰かに吐き出します。そうすると、悩んでいたことも大したことなかったなと思えるようになります」

 

―先ほどダンスのためにアイシングをしているというお話がありましたが、今作でも劇中に社交ダンスが出てきます。これまで内海さんが踊ってこられたダンスとはまた違ったものになりそうですね。
「そうですね。僕はこれまで歌をメインにやってきたので、今は基礎からダンスのレッスンをしています。(これまでに出演してきた)2.5次元ミュージカルの作品では踊るシーンもありましたが、それはリズム感と運動神経でなんとかカバーしてきたという感じで(苦笑)。なので、今回は、しっかりとしたペアダンスをお見せできるよう頑張りたいと思います。この数年で、ダンスは二人の距離感を表現したり、手先まで使って表現することの大切さに気づいたので、細かいところまでダンスで表現できたらと思います」

 

―ところで、本作ではジャンが家族に恋人を紹介することで物語が展開していきますが、内海さんご自身は大事な人はすぐに紹介したいタイプですか?
「普段、僕は家族には何でも話すタイプなんですが、どうですかね、悩みますね(笑)。でも、大事な人を紹介するというのは、決意やタイミングがあってのことだと思います。きっとジャンも彼なりの決意があって紹介したんだと思うので、その素直な思いは演じる上でも大切にしたいなと思っています」

 

―では、「異色の愛」「家族の絆」を描いた本作にちなんで、絆を感じた出来事を教えてください。
「『GREASE』は絆でできている作品なので、この作品に携わっていた間、ずっと絆を感じていました。舞台は生ものなので、毎日、どこかでトラブルが起こるのですが、それをみんなで何もなかったように、これも演出のひとつかのように作り上げていくときに絆を感じます。みんなでいかにカバーし合っていくかというのが舞台では大事なんだと改めて気付かされました」

 

―内海さんにとって、ミュージカルの魅力とは? ぜひ、「ミュージカル愛」を語ってください!!
「実は僕が、ミュージカルの世界で生きていきたいと思ったのは、3、4年前なんです。それまでは、ミュージカルをこんなに好きになるとは思っていませんでした。もともと僕は歌が好きで、20歳くらいの頃から路上ライブをしていたので、歌で何かを表現するのが好きでした。それに、お芝居をすることも好きだったので、初めてミュージカルに出演させていただいたときに、こんなにも楽しい世界があるんだと思いました。それから、ブロードウェイミュージカル『キンキーブーツ』を観劇した時も、“なんて華やかで素敵な作品はなんだ!!”と大きな衝撃を受けました。華やかでありながら、メッセージ性の強いエンターテインメントがあることを知り、僕も役者として何かを届けたいという強い想いが生まれたきっかけでもありました。今、コロナ禍という大変な状況下ですが、その中にあっても、エンターテインメントやミュージカルは、心に明るい光を照らすことができる力があると信じています。僕もこれから頑張って、観に来てくださったお客さまの心を明るくできたらと思います」

 

―今後の役者としての目標は?
「具体的な、というよりは30才の時に自分がどんな俳優になっているのかというのを
一つの目標としているので、それまで地道に頑張ってどんな役でもできる役者になれる
よう力をつけていきたいと思っています」

 

―ちなみに、そのやってみたい役や作品って?
「沢山あり過ぎて・・・。自分と同世代の役柄や、同年代の人たちが演じている役は全部やりたいですし、可能性があるなら色々な役をやりたいです」

 

―ミュージカルを好きになって、こんな役をやりたいとしっかりとした目標ができたのはいつ頃からなんですか?
「僕自身は観客として、ミュージカルに触れて、そのエンターテインメント性を感じた時からだと思います。そこには映像では感じられない、舞台、生ならではの華やかさがありました。生だからこそ感じるビートや心が震える感じというか…きっとミュージカルを観劇したことがある方ならわかると思いますが、あのゾワッとするような感覚は劇場でしか味わえない物だと思うので、それを生み出す役者になりたいです」

 

―現在のコロナ禍では、舞台に立つこと自体、大変なことも多かったと思います。コロナ禍を経て、舞台への取り組みや心境で変化はありましたか?
「自己管理をより強く意識するようになりました。舞台はたくさんの人が関わってひとつのものを作っていくので、自分がコロナになってしまったらみんなの仕事がなくなってしまうと思うと、やはり緊張感はあります。役者としてはマスクをしないで稽古をしたいですが、(稽古場では)マスクをつけてお芝居をして、歌を歌わなければならないので、そうした苦労はありましたが、それにも少しずつ慣れてきました。コロナ前は、板の上でみんなが頑張り、それで舞台が作られていると思っていましたが、今はお客さんも一体になって一つの作品を作っているんだということを改めて強く感じています。この状況下でマスクをつけて消毒を徹底して、それでも観に来てくださっている観客の皆さんの強い想いはより感じるようになりました」

 

―マスクをしていても、お客さまの反応や想いはステージの上でも感じますか?
「分かりますよ!!きっとこのシーンは声を出したいけど我慢しているんだなというのも伝わってきます。声は出せなくても、マスクをしていても、お客さまの想いは僕たちにしっかり届いていて、僕はそれが受け取れることがすごく嬉しいです」

 

―最後に、本作の見どころや観劇を楽しみにされている方にメッセージをお願いします!!

「“異色の愛”をテーマにした、王道ミュージカルです。最後はハッピーエンドで終わるので、観に来てくださるお客さまには心から楽しんでいただければと思います。歴史のある作品で、この作品を愛している方がたくさんいらっしゃると思うので、これから稽古を通して、僕もよりこの作品を深く知って、愛して、先輩方の胸を借りながら頑張っていけたらと思っています。劇場でお待ちしております」

 


【内海啓貴さんのファッション事情】
―最近買ったファッショングッズや“推しグッズ”を教えてください!!
「ユニクロのネックウォーマーです。これ、すごいんですよ。回転させて、片側をすぼめるとニット帽にもなるんです!!(笑)。手首、足首、首と“首”がつくところを温めるといいと言われているので、首元は温めたいと思って。なので、冬になると、どうしてもマフラー系のグッズを購入することが多いです。あとは真冬の防寒対策にTHE NORTH FACEのダウンジャケットを購入しました。すごく暖かいんですが驚くほど軽くて、しかもほぼB5サイズのポーチに収まってしまうんです!!お稽古期間に大活躍すると思います」

【profile】
内海啓貴/Akiyoshi Utsumi
1995年1月16日生まれ。神奈川県出身。AB型。
主な出演作は、ミュージカル『テニスの王子様3rdSEASON-全国大会-氷帝学園』日吉若役、2017年舞台『イムリ』主人公デュルク役、2018年ミュージカル・本格幻想RPG原作『陰陽師~平安絵巻~』白無常役で出演、東京、深セン、上海、北京での公演にも参加。主な出演作は、ミュージカル『「黒執事」-Tango on the Campania-』(2018年)、ミュージカル『いつか~one fine day~』(2019年)、ミュージカル『アナスタシア』(2020年)、ミュージカル『バーナム』(2021年)、『SMOKE』『グリース』(2021年)。2022年3月には『ラ・カージュ・オ・フォール』への出演を控えている。


【公演概要】
■タイトル
ミュージカル『ラ・カージュ・オ・フォール』籠の中の道化たち
■日程・会場
東京公演:2022年3月8日(火)~3月30日(水) 日生劇場
名古屋公演:2022年4月9日(土)・10日(日) 愛知県芸術劇場 大ホール
富山公演:2022年4月16日(土)・17日(日) オーバード・ホール
福岡公演:2022年4月22日(金)~4月25日(月) 博多座
大阪公演:2022年4月29日(金 )~5月1日 (日) 梅田芸術劇場メインホール
埼玉公演:2022年5月7日(土)・8日(日) ウエスタ川越 大ホール

■作詞・作曲 ジェリー・ハーマン
■脚本 ハーベイ・ファイアスティン
■原作 ジャン・ポワレ
■演出 山田和也
■翻訳 丹野郁弓
■訳詞 岩谷時子 滝弘太郎 青井陽治
■オリジナル振付 スコット・サーモン
■出演
鹿賀丈史 市村正親
内海啓貴 小南満佑子 真島茂樹 香寿たつき
今井清隆 森公美子 ほか
■主催・企画製作 東宝 ホリプロ
■公式ホームページ https://www.tohostage.com/lacage/

(2021,12,07)

photo:オフィシャル提供/interview&text:Maki Shimada

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