2020年7月に日本初演を迎えたミュージカル『BLUE RAIN』は、2018年に韓国・大邱国際ミュージカルフェスティバルにて「創作ミュージカル賞」を受賞した話題作。
ドストエフスキーの名作『カラマーゾフの兄弟』をベースに、1990年後半のアメリカ西部を舞台に、ひとつの殺人事件の真相を追ううちに、ある家族――父と息子たち、兄と弟の憎しみと深い因縁を暴き出し、さらに一家を超え人間といういきものの根源的な業を描き出していく、サスペンスの要素もありながら文学的な叙情性を持つミュージカル作品です。
日本初演時は、コロナ禍での上演を考慮したビニールシートとソーシャルディスタンスを保った演出効果に取り組み、反響を得た本作が1月13日より銀座・博品館劇場で再演を迎えます。
初演に引き続き出演の東山光明さん、池田有希子さん、そして再演よりカンパニーに加わった大沢健さんに作品への想いをうかがいました。

 

ー2020年7月に引き続き1月13日から再演がスタートします。初演はコロナ禍での上演となりましたが、対策を踏まえた演出で無事千穐楽を迎えた時はどうでしたか?
東山さん「無事に完走できたことに感動しました。そして初演の初日、客席にお客さまが入り、観劇してくださっているということに感激し、最後のカーテンコールでのお客さまからの拍手に感動し、お客さまの拍手で救われた気持ちもありました。僕たちは表現者として舞台に立っていいんだ、立たないといけないんだという使命も感じることができました」

池田さん「いつ公演が終わってもおかしくない状況で、今日が最後の公演になるかもと腹を括るしかないって思って臨んでいました。常に緊張感がある中で芝居をしていましたし、その緊張は今でもほぐれてはいません。そういった状況で芝居をすること自体が初めての経験でしたので、このような状況の中でお芝居をさせていただけているということがすごいことなんだなと思って過ごしていましたね」

東山さん「東京公演の千穐楽後、演出の荻田さんが全員に向けて、“これはいろいろな奇跡が重なりあって全員が無事完走でき、それは全員の努力で勝ちとったものだよ”とおっしゃってくださったこともすごく心に残っています」

 

ー現在もコロナ禍という状況は変わりませんが、今回再演が決まった時はどんなお気持ちでしたか?
東山さん「いろいろと大変な中でやり切った作品で、役柄も含めて自分の中ではすごく特別な思いや挑戦、心配、戸惑いがあった中で、Wキャストでルークを演じた佐賀(龍彦)君と切磋琢磨して作りあげた作品です。再演はシングルキャストですので、新たにネジを巻き直して臨んでいます」

池田さん「ポストコロナバージョンと言い切れれば良かったのですが、まだコロナ禍ということで変わりはなく、インフルエンザなども含めて油断でません。その中でも、演出の部分で初演から比べるとキャスト同士の接触が可能になったので、そこはすごく大きな違いです。舞台装置などの大道具は初演から変わりませんが、心持ちはすごく変わり、私の中ではまた新しい違ったバージョンという意識でいます」

 

ーお稽古場の雰囲気にも変化はありましたか?
池田さん「そうですね!!緊張感は継続しつつ、感染対策は注意しながらも手を握ったりコンタクトが取れるので、そこは随分違っています」

 

ー大沢さんは再演からの参加になりますが、お稽古場の雰囲気はどうですか?
大沢さん「再演から参加するプレッシャーはありますが、再演ではあれど、皆さんが新鮮な気持ちで臨んでいるという姿勢が伝わってくるので、僕も皆さんと同じスタートラインに立っているという気持ちにさせてもらっています」

 

ー改めて皆さんが感じる作品の魅力を教えてください。
東山さん「『BLUE RAIN』の曲の繊細さ、どの曲もメロディーラインが耳に残り、今まで僕が感じてきたミュージカルの曲とは全然違った楽曲です。ほぼピアノだけでアコースティックギターでリズムを足しながらというサウンドに僕たちの歌と声しかないという作品なので、全部が削ぎ落とされてシーンとした中での“間”も含めて作品になっています。緊張感の中で始まり、体感するミュージカルというところが魅力だと思います」

池田さん「歌がいい!!曲がいい!!何度もリメイクされ、日本でもドラマが放送された『カラマーゾフの兄弟』という作品がベースとなっていて、その作品自体人気があるというのがわかります。水風船のようにいっぱいいっぱいになって、ちょっとでも針が刺さると破裂するような状態の人たち。それって見ている人にとってはすごく興味深いんだと思います。そういう中で、敢えて突き合ったりする。そういうところが作品の魅力だと思います。観ていても面白い!!」

大沢さん「初演時にソーシャルディスタンスを意識して作られた舞台のセットが、心を通わせようとしてもなかなか通じない関係性を表現していますし、演じる側も遮るものがあると負荷がかかります。その負荷が、みんな頑張って必死に生きていこうという人間のエネルギーに転換できるのではないかと思います。いろいろなことが効果的に働いていると思います」

 

ー今回東山さんは、自身の父親が殺された事件の真相を追うルキペール家の次男・ルーク役を、大沢さんは、犯人と目されるルキペール家の長男・テオを演じます。改めて兄弟を演じるお互いの魅力を教えてください。
東山さん「大沢さんは、例えば鯛焼きを食べていたら自分の分までくれそうな優しい兄って感じですよね。実際には僕は3人兄弟の末っ子で、比較的かわいがられて育ってきましたが(笑)、一応取り合いはあるんですよ。当時はプリンでしたが、3つあって真ん中の兄貴が一番最初に食べるんです。一番上の兄貴は最後に残して、寝る前とかに食べたい人。二番目の兄貴は自分の分がなくなると僕の分を食べようとするじゃないですか。僕のを食べたら、僕が泣くんです。そうすると一番上の兄が二番目の兄をコラってやるんですよ。まさにその長男!!って感じがします。でも大沢さんは真ん中の兄貴を叱るより、“これを二人で分けろよ”って譲ってくれそう。そこは実際の兄とは違うところですね」

大沢さん「(笑)。僕は一人っ子だからマイペースなのかもしれないね」

 

ー大沢さんから見た東山さんはどんな方ですか?
大沢さん「僕はミュージカル経験が少ないので、(稽古で東山さんを)見ていると“なるほどな”と思うことがありますね。芝居の延長線上に曲があって、そこに乗っていくと言うところですね。(東山さんの出演している)他の作品も観てみたいと思って当日券を買って観に行ってきました。すごく勉強になります。稽古も新鮮で得られることも多いので、楽しい稽古場です」

 

ー池田さんは、二人の兄弟がいるルキペール家に長年仕える使用人・エマ役を演じます。エマとして二人の兄弟をどのようにみていますか?
池田さん「辛い役の二人を見ていなければいけないのはとても辛いですね。辛さを運命として受け入れなければいけない二人。辛い運命を取り払える力がなく無力である分、二人には本当に幸せになってほしいという強い願いがエマにはあります。そして、その苦しみを与えている二人の父親まで救われたらいいのにって思っています」

東山さん「父親まで含めて救いたいと願っている。そこがエマなんですよね!!僕は池田さんが演じるエマしか知らないので、池田さんが演じるエマがまさにエマであると思っています。稽古のときにテオに対するアプローチと僕が演じるアプローチが違くて、ルークとしての見方としては、テオの方が好きなんだなって思うところがあります」

池田さん「(大沢さんとは共演が)20年ぶり?なので関係性が作りやすいのかなって思います」
東山さん「そういうのも含めて(東山さん演じる)ルークよりテオの方が好きなんじゃないかって思ってしまうくらいに母親がわりのエマの部分が持って、そこに存在してくれています」

池田さん「僕の方を振り向いてっていう気持ちね。それは兄弟の関係が出来上がっているから感じることだと思うよ」

東山さん「そうだね。大沢さんとの兄弟関係をもっともっと構築していけたらと思います」

 

ー最後に公演を楽しみにしている皆さまへメッセージと見どころをお願いします。
東山さん「6人のキャストで、この濃いストーリー、人間模様といろいろな感情を音楽にのせてノンストップで続くコロナ禍で生み出したミュージカルをぜひ体感しに来てください!!」

池田さん「お芝居ってきっかけがないとなかなか観に行く機会がないと思います。私自身はそういう環境でしたので、今自然とお芝居をやっていますが、接点がなければ遠く感じるかもしれません。ちょっとの勇気を出して、観に行ってみようって思っていただいたら、私たちはその時に、皆さんが面白いって感じるものを作ります!!ぜひちょっと行ってみちゃおうかなって思ってみて欲しいです!!」

大沢さん「ベースが『カラマーゾフの兄弟』のこの作品は、皆さんがイメージするミュージカルのテイストとはちょっと違うかもしれません。舞台のセットが、ある種異様な雰囲気もあって、それが独特の世界を生み、曲の持つエネルギーと相まって、最初からグッと首根っこを掴まれるように一瞬で作品の世界に誘われるような力のある作品です。ちょっと足を踏み入れてみたら、グッと作品に引き込まれます。ぜひこの作品に触れてみてください」

 


▶︎東山光明さんのファッション事情
ファッションのこだわりっていうのは特になくて、その日の気分というのが多いですね。ただ気をつけているのは色も含めたバランス。上がタイトだとボトムはダボっととかあるじゃないですか。上がダボっとした時はボトムはタイトにするとか、あとはシューズのバランス。靴はたくさん持っていて、いつも最後に決めます。全体のバランスの最後を締めるのが靴だと思うので、どの靴を履くのかというところはもしかしたらこだわりかもしれないですね。

【profile】
東山光明/Mitsuaki Higashiyama
1980年5月22日生まれ。大阪府出身。A型。

 

▶︎大沢健さんのファッション事情
最近お気に入りのブランドがあって、今日のデニムもそうですが、愛媛のra shink(ラシンク)というブランド。これは、サイズが細分化されているので、フィッティングすると本当にぴったりのものと出会えるので、何本か購入してはいています。今日はいているパンツは、バイクに乗る人用に膝のところが立体的になっていて、スマホをいれるポケットがあって、そこからコードを通すホールがついていたり、すごく凝っているところもあって気に入っています。

【profile】

大沢健/Ken Osawa
1974年12月28日生まれ。東京都出身。O型

 

▶︎池田有希子さんのファッション事情
お稽古でジャージを着るので、仕事着がジャージ、普段着がジャージ、一張羅がジャージだったりするんです。こだわりがこれです!!Marimekko(マリメッコ)とadidas(アディダス)のコラボのジャージで最近これしか着ていなんじゃないかというくらいの超お気に入りです。ジャージでもおしゃれな感じに見てもらえることを心がけています。演劇人もおしゃれって思ってもらえるよう心がけてます。当日着る服は朝決める派です。前日に決めたらいいのにって思うのですが、眠いので生煮えのまま寝ちゃって、朝起きてあれ着ようって思ったものが洗濯に入ってしまっていたり、プランチェンジ!!っていうところでライフを削がれるので、スティーブ・ジョブズみたいにユニフォームを決めて、それを着るっていう方がいいな。他にもやりたいことがあって、ファッションを後回しにしがちなので、でもおしゃれに見えるようにしたいって。買う段階で、壊滅的なコーデになるものは避けて、持っているどんなアイテムに合わせても合うものを買うようにしています。
そこで一旦選別されているので、あとは事故らないようなスタイリングをするだけです!!

【profile】

池田有希子/Yukiko Ikeda
1970年6月23日生まれ。東京都出身。B型。


【STORY】
――――俺を殺したのは、誰だ。
1997年、ニューヨーク。強欲な富豪、ジョン・ルキペールが殺害された。
犯人と目されたのは、父と反発し12年間家に戻っていなかった長男、テオ。
弁護士となった次男のルークはこの事件の真相を追ううちに、殺害現場から大金が消えていたこと、兄テオの恋人・ヘイドンがジョン の愛人になっていたことなど、兄に不利な証拠ばかり見つけてしまう。現場で倒れていたルキペール家の家政婦・エマはテオをかばうも、新しく入ったばかりの使用人・サイラスらの証言も、テオが犯人であることを示しているようだ。
この事件の真相は……そして次第に浮かびあがる、家族の相克。彼らが抱える憎しみの行方は……。


【公演概要】
■タイトル
Dramatico-musical『BLUE RAIN』
ORIGINAL PRODUCTION BY C101

BOOK BY JOUNG HWA CHOO, MUSIC BY SOO HYUN HUH
■日程・会場
2022年1月13日(木)〜1月26日(水) 博品館劇場
■脚本・演出
荻田浩一
■音楽監督
河谷萌奈美
■出演
東山光明・彩乃かなみ・石井雅登・染谷洸太・伊藤広祥 /大沢健/池田有希子/今拓哉
■演奏
河谷萌奈美/門馬由哉・小金坂栄造
■公式ホームページ
https://g-atlas.jp/bluedramatico/
■公式Twitter
@BlueDramatico


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(2022,01,11)

photo:Hirofumi Miyata/interview&textt:Akiko Yamashita

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