舞台『室温~夜の音楽~』合同取材会が2022年5月31日(火)に、東京都内で行われ、古川雄輝さんと浜野謙太さん、演出の河原雅彦さんが登壇しました!!

 

演劇界の第一線を走り続けるケラリーノ・サンドロヴィッチさんが2001年に作・演出を手掛けた本作は、人間が潜在的に秘めたる善と悪、正気と狂気といった、相反する感情に恐怖と笑いを織り込んだホラー・コメディー。今回は、河原さんが戯曲に惚れ込み、上演を熱望したことで、21年ぶりに復活します。

作品のタイトルにもあるとおり、本作では音楽がカギ。浜野さんがフロントマンを務める“新しい時代のディープファンクバンド”在日ファンクが全公演に出演し、生演奏を披露します。

 

河原さんは、「ケラさんを尊敬していますし、面白い作家さんだと思っていますが、演出する立場になると、ケラさんの作品を預かるのはハードルが高い。その中でも、自分でやってみたいと思った時に、真っ先に思い浮かんだのがこの『室温』でした」と明かしました。さらに、「当時、ケラさんが『たま』さんありきでこのお話を作られました。ケラさんの作風と同じように、『たま』の世界観も唯一無二。この作品は、音楽とともにある作品だと思うので、そこで、一緒にこの作品とコラボできるミュージシャンはないかと考えたときに、ファンクだと思った。それで、在日ファンクさんだと思ったんです。一緒に組めなかったらやっていませんでした」と製作の経緯を説明しました。

 

在日ファンクとしてオファーを受けた浜野さんは「(在日ファンクの)観念的なところをもっと広げてくれんじゃないかという嬉しみがあったので、ぜひやりたいと思いました」と振り返りました。そして、「バンドメンバーたちは、最初は“芝居で音楽を演奏するの?”という疑心暗鬼な感じがありましたが、やり始めたらのっている。このために書き下ろした新曲も何曲か(劇中に)入っていますが、そういう場を提供してくださったことに感謝しています」と笑顔で語りました。

 

一方、主人公・間宮を演じる古川さんは、本作が3年ぶりの舞台出演になります。「映像作品では、稽古の期間を設けることはないので、稽古ってこんな感じだったっけと新鮮です。ただ、楽しくやろうという思いで稽古場に入りましたが、そこにはまだ至れていないですね。今はまだ必死に役柄をつかもうと思っている段階です。ドラマではスピードが重視されるので、今は役と向き合ういい時間を過ごせています」と稽古が始まった今の心境を話しました。

 

今回の戯曲は、河原さんが「ケラさんの本は大変なんです。さらっと読めるけど、相づち一つでも(周りの人物などに)作用するから、気が抜けない。2、3行読んでは止めてという稽古になる」と話すほど、難しいと言います。古川さんも自身が演じる役について聞かれると「どうなるのかまだお答えできない状態」と苦笑いで漏らしたほどで、「思っていた何十倍も難しくて、早い段階で壁にぶつかっちゃったなと思っている」と吐露していました。

 

そんな古川さんに対し、河原さんは「とても誠実な人だと思います。できる振りをする人が多い中で、(古川さんは)分からないことを分からないと言って、できないことはできないと言う人です。でも、分からないなりにでも要求したものに近いものを見せてくれる。チューニングを合わせるのに時間が必要だけれども、彼の中で腑に落ちたら、オリジナリティがある間宮が出来あがると思います。演出家として、とても信頼できる人です」とコメント。浜野さんも「みんな(河原さんの話を聞いて)“そうですよね”と言いながらも、“わかっているのかな”という雰囲気になっているけど、(古川さんだけは)ポカーンとしてる。その姿はまさに間宮なので、役作りはできていると思います。でも、(分かる振りをしないから)信頼できるんです」と話しました。

最後に河原さんは「本を預かるのは、ケンカだと思ってやっています。勝ち負けではないと分かっていますが、初演にはない面白さを見せられなければ負けだと思います。大きなリスペクトを持って、我々なりのものを作る。負けていると思われないように、勝てるように頑張ります」と強い決意をにじませ、取材会を締めくくりました。

 

 

【あらすじ】
田舎でふたり暮らしをしているホラー作家・海老沢十三(堀部圭亮)と娘・キオリ(平野綾)。
12年前、拉致・監禁の末、集団暴行を受けて殺されたキオリの双子の妹・サオリの命日の日に、様々な人々が海老沢家に集まってくる。巡回中の近所の警察官・下平(坪倉由幸)、海老沢の熱心なファンだという女・赤井(長井短)。タクシー運転手・木村(浜野謙太)が腹痛を訴えて唐突に侵入し、そこへ加害者の少年のひとり、刑務所から出所したての間宮(古川雄輝)が焼香をしたいと訪ねてくる。
偶然か…、必然か…、バラバラに集まってきたそれぞれの奇妙な関係は物語が進むに連れ、死者と生者、善と悪との境が曖昧になっていき、やがて過去の真相が浮かびあがってくる…。

 

【公演概要】
■タイトル
『室温~夜の音楽~』
■日程・会場
東京公演:2022年6月25日(土)~7月10日(日) 世田谷パブリックシアター
兵庫公演:2022年7月22日(金)~7月24日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
■作 ケラリーノ・サンドロヴィッチ
■演出 河原雅彦
■音楽・演奏 在日ファンク
■出演
古川雄輝 平野綾 坪倉由幸(我が家) 浜野謙太 長井短 堀部圭亮 伊藤ヨタロウ ジェントル久保田

(2022,06,01)

photo&text:Maki Shimada

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