2021年3月を持って特別専科へ移籍するOSK日本歌劇団の“唯一無二の男役”桐生麻耶さん。
新型コロナウイルスの影響による公演中止を乗り越え、トップスターラストステージ「春のおどり」が、2021年1月の大阪公演に続いて、3月26日から28日まで東京 新橋演舞場にて上演されます。
第一部の尾上流四代目家元の尾上菊之丞さんによる『ツクヨミ~the moon~』では、“月”が繋ぐ日本の時代を、美しくダイナミックに描き出し、第二部の宝塚歌劇団出身の荻田浩一さん作・演出によるレビュー『Victoria!』では、OSKらしい爽やかな幕開きに桐生さんが率いる大人香るデュエットダンスから、エネルギッシュなラインダンス、そして、ダンスのOSKが挑むボリウッド風の群舞など多彩な魅力満載のステージが予定されています。
2022年には劇団創立100周年を迎えるOSK。その歴史を支えてきたトップスター桐生麻耶さんに、東京公演の記者会見前に公演への思いをお聞きしました。

ーいよいよ本日記者会見に臨みますが、今のお気持ちをお聞かせください。
分かってはいるんですが、初日がもう直ぐ来るんだなって実感します。初日前にこういった会見をさせていただくと向き合い方が違ってきますね。公演を待っていてくださる方いるということは分かっていますが、視覚化して感じることができるのですごくありがたい機会ですね。

 

ー本来でしたら、昨年公演を迎える予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で約1年越しの公演となりました。この1年過ごしてこられたお気持ちを教えてください。
新型コロナウィルスについては、状況をみることしかできないので来るべき舞台に備えてしっかりと身体と気持ちを持続させることですね。それも1年は持ちませんからね。ですので、何年か振りに一度頭の中から舞台のことを忘れるということをやりました。OSKに入って、ある程度の学年からはお休みの日、どこか舞台に役に立つのではないかという思考が働いてしまうんですね。もしかしたら頭の片隅には残っていたかもしれませんが、一旦リセットすることができたのは、新鮮な経験でした。

 

ー3月26日からの新橋演舞場公演がトップスターとしてのラストステージです。「春のおどり」でラストステージを迎えるという想いを教えてください。
OSKと言えばやはり「春のおどり」はメインの作品です。その作品で、今の立場を締めくくれる機会をいただけたことはすごくありがたいことです。あとは体調に気をつけて千穐楽までしっかりと務めるだけですね!!

 

ートップスター就任の中で苦労したこと、もしくはこれはトップスター就任したからこその嬉しい経験を教えてください。
本当にこういう時間です!!こうやって取材で直接お話したり、対談で先生方と一緒に作品についてお話をしたりする機会は全員が持つことができるわけではありません。そこでOSKを支えてくださっているんだな、とか見守っていただいているんだな、と実感できる機会が、私にとって嬉しいことです。苦労したことは、本当にみんなが助けてくれるので、無いですね。もちろん作品を作り上げるという大変さはどの作品でもありますし、トップだから経験する苦労というのはもしかしたらあるのかもしれませんが、考えないようにしていました。

 

ーとてもストイックに舞台に向き合っているという印象がすごくあるのですが、桐生さんが今までずっと続けていることを教えてください。
歌劇にとらわれないということです。歌劇をやっているのにおかしいって思われるかもしれませんが、私に限ってですが、歌劇だけを意識すると形式美が強くなりすぎて、気持ちが伝わらないと思うところもあって。矛盾しているかもしれませんが、そこにある曖昧さを探せないかと思っています。

 

ーそれは広い意味でのエンタテイメントや芸術的な部分と心や気持ちの部分をどうやってお客さまに伝えるかということを常に考えていらしゃるということですよね。
そうですね。視覚的な部分だけでなく、舞台上から想いを届けられると思っています。生の舞台は、絵画のように作品を見る、愛でるだけというのはなく、心が動くというところがやはりOSKにはあって、どこかお客さまと距離が近いと感じています。

 

ーその想いが、OSKの舞台ならではの客席に伝わってくる温かさ、会場を包む一体感へと繋がっているんですね。桐生さんはこれから専科に移籍なされて、2022年には100周年をOSKとして迎えることになります。OSKに期待することを教えてください。
OSKを好きで心の糧にしてくださっている方はもちろん、これからOSKを知ってくださる方もいらっしゃいます。そういう方たちの人生や心の支えになれるような劇団でありたいですし、元気を届けられる劇団でありたいと思います。長く続くようにしっかりと向き合ってやっていきたいと思います。

 

ーこれから先、桐生さんの描いていることは?
新たなことですので、予想ができないのですが、不安と楽しさが半分ずつですね(笑顔)。でもこの立場だからできるちょっとした冒険もできると思います。お客さまに楽しんでいただければという思いがぶれないようにしていきたいですね。

 

ーストイックな桐生さんですから、この先もずっと芸事にストイックに取り組む姿勢は変わらないですね!!
勝手ストイック(笑)なんですよ。努力することは、人より自分が足りていない部分を補って、間に合わせるためにすることなので、そこをあまり意識したことがないんですよね。OSKは今52名いますが、同じ劇団員であっても戦いという部分はあります。足の引っ張りあいではなく、必要とされる人間でありたいと思います。その気持ちはみんな同じなので、芸事と向き合う中でそこは神経質にならないようにしています。以前だったら、感情をぶつけるところもあったと思うのですが、先日テレビでいいなと思った言葉があって、【不機嫌でいる時間がもったいない】。時は同じように流れているので、であれば前向きに笑顔でいる方がいいかなって思っています。

 

ー3月26日の初日まであと僅か。どんな公演にしていきたいと考えてらっしゃいますか?
待っていてくださった皆さんは楽しみに劇場に来てくださると思います。「観てよかった」とおっしゃっていただけるようにエネルギーを燃やしていきたいと思います。このような状況で、劇場に来ていただけるというのは当たり前の環境ではないでしょうし、億劫なところもありますよね。その日のスケジュールを前からキープして、チケットを取って、遠方の方でしたらホテルを予約したり、電車のチケットを予約して劇場に来ていただき、長い時間劇場の椅子に座って過ごしていただくのですから、日常を忘れて楽しんでいただきたいと思いますので、そうありたいと思っています。

 

ー今回の公演の見どころを教えてください。
第一部の『ツクヨミ~the moon~』では、全部で3役(蘇我入鹿、伊達政宗、堀江安兵衛)あります。どれもメインのお役でタイプの違う人物を演じ分けます。そこを取り巻く状況を楽しんでご覧いただけます。ひとつの作品で3つ楽しめます。第二部は、宝塚歌劇団出身の荻田浩一先生による作・演出のレビュー『Victoria!』です。お祭りのような場面がありますし、ラインダンスもかわいくて、本当にいい振付です。許されるならラインダンスにも出たいくらいです(笑)。OSKならではの華やかなレビューを楽しんで頂けたらと思います。

 

ー本当に美しい圧巻のレビューは、会場でご覧いただきたいですし、見どころ満載の公演になりますね!!最後にメッセージをお願いします。
若い方がご覧になって、OSKに入ってみたいと思っていただける作品にしたいですし、なっていると思います。歌劇に興味がなく、何かのご縁で今回初めて「春のおどり」をご覧いただく方には一度ご覧いただいたらOSKからは離れられなくなる作品になっています!!待っていていただいた皆さんには満足していただける作品になっております。まず初日に足をお運びいただき、堪能していただければと思います。劇団員全員、公演できることを幸せに思い、東京へ乗り込んでしっかりと務めたいと思います。

 

【profile】
OSK 日本歌劇団トップスター。
175センチの長身と抜群のスタイルを武器に、鋭いセンスとバランス感覚、そして積み重ねた技術で圧倒的な存在感を発揮している。アクロバティッ クでダイナミックなものから、重厚で繊細な心理描写もこなし、コミカルな芝居まで硬軟問わずに演じ分ける演技力は舞台に厚みをもたらしている。
2019年3・4月「レビュー 春のおどり」(東京・新橋演 舞場/大阪・大阪松竹座)のトップ披露公演では、“唯一無二の男役”として圧巻の舞台を率いた。2019年7月「OSK SAKURA REVUE」(京都・南座)では『歌劇 海神別荘』の公子を堂々と演じた。このたび2021年「レビュー 春のおどり」(大阪松竹座・新橋 演舞場)をもってトップスタ-を勇退、特別専科へ移籍する。

 

【公演概要】
■タイトル
レビュー春のおどり
■日程・会場
2021年3月26日(金)〜3月28日(日) 新橋演舞場
■出演
桐生麻耶 楊琳 虹架路万 舞美りら 愛瀬光 華月奏 翼和希 千咲えみ 白藤麗華 城月れい 遥花ここ ほかOSK日本歌劇団
■公式ホームページ
https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/enbujyo_202103/

(2021,03,23)

photo:Hirofumi Miyata/interview&text:Akiko Yamashita

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