尾上菊之助さんが作り上げる『新作歌舞伎ファイナルファンタジーX』製作発表記者会見　名シーンを“水を使わないで表現”

木下グループpresents『新作歌舞伎ファイナルファンタジーX』製作発表記者会見が2022年11月29日(火)に行われ、尾上菊之助さん、中村獅童さん、尾上松也さん、坂東彦三郎さん、中村梅枝さん、中村米吉さん、中村橋之助さん、上村吉太朗さん、SQUARE ENIXの北瀬佳範さんが登壇しました!!

本作は、これまでも「NINAGAWA 十二夜」や「マハーバーラタ戦記」「風の谷のナウシカ」など自身の企画、構成などから新しい歌舞伎の舞台を創り出してきた菊之助さんが新たに挑戦する新作歌舞伎。不朽の名作ゲーム『ファイナルファンタジーX』の世界観を、アジア初の没入型エンタテインメント劇場であるIHIステージアラウンド東京で世界初上演します。

企画・演出を手がけ、さらに主人公のティーダを演じる菊之助さんは、本作の制作に至った思いを「制作が始まったのは2020年3月、コロナ禍の真っ最中でした。毎月、当たり前のようにあった歌舞伎公演がなくなってしまって、先行きが見えない中、何とかしたいという気持ちをすくい上げてくださったのが20年前に発売された『ファイナルファンタジーX』でした。この物語は初めは登場人物たちの心はバラバラです。物語が進むうちに心を通わせ合い、それぞれが持つ葛藤を超えながら成長し、一人がみんなのために、みんなが一人のために、互いを思い合いながら『シン』という強大な敵に前向きな心で向かい、そして諦めない姿勢はコロナ禍の世界、そして戦争が起きている世界に強いメッセージを届けられるのではないかという思いで歌舞伎での制作をしました」と説明。「私自身も救われたように、コロナ禍で大変な日本、そしてエンターテインメントの世界に少しでも元気を届けられればと思っています」と力強く語りました。

また、北瀬さんは菊之助さんから歌舞伎化についての打診があった時を振り返り、「最初に聞いたときは非常に驚きましたが、熱い想いを語っていただきました。伝統芸能である歌舞伎と、文化という分野では最後発のゲームの文化が融合することでどんなものが生まれるのかとお話をいただき、驚いたのですが、非常に野心的で面白そうな企画だと思い、即決したのを覚えています」と話し、「今回は一観客として非常に楽しませていただきたい。今から完成がどうなるか非常にワクワクして待っています」と楽しそうな顔を見せました。

今回の見どころについて、菊之助さんは「マカラーニャの森」と「ユウナの異界送り」、「ブリッツボール」のシーンを挙げました。特に、「マカラーニャの森」と「ブリッツボール」のシーンでは、「水を使わないで表現できないか」を模索しているそうで、IHIステージアラウンド東京の8メートルのスクリーンに映像を映して、ゲームの世界観を表現するそう。

また、「マカラーニャの森」のティーダとユウナのキスシーンは原作ファンからも人気の高いシーンだが、菊之助さんは「歌舞伎でも色ごと、色模様というのがあって、男女が心を通わせるキスシーンの表現の仕方も実は歌舞伎は持っています。心を形にするのが型だと思いますが、その型の表現に落とし込みつつ、ティーダとユウナの感情ならではのものを作れたら」と自信を覗かせました。

▼そのほかの登壇者の皆さんのコメントはこちら▼

アーロン役：中村獅童さん

「コロナ禍で、私自身もこれからの自分の生き方やこれからの歌舞伎界を考えている中、（菊之助さんから）お電話を頂き、熱い気持ちを聞かせて頂いて、それに賛同させて頂きました。熱い気持ちに応えられるように一生懸命務めさせて頂くと同時に、演出の菊之助さんについていきたいと思います」

シーモア役：尾上松也さん

「菊之助のお兄さんから、最初にお話を聞いた時は非常に驚きましたし、それと同時にコロナ禍においても常に前に進もうとするお兄さんの姿勢に感動しましたし、なおかつ大先輩であります菊之助さんから直々に思いを聞かせていただいたのは非常に光栄でした。微力ながらお力になればとお引き受けさせていただきました。自分の中でも初日に向けて意欲が増してきているところです。お兄さんの演出の元、皆さんに見たこともない歌舞伎体験をしていただけるように務めたいと思います」

キマリ役：坂東彦三郎さん

「私だけ少しだけ色の違う役柄を演じなければいけないので不安な部分もあるのですが、とても素晴らしい勢いのある共演者が揃っておりますので、その方々の熱にも負けず、菊之助さんの熱にも負けず、勢いのあるカンパニーのまま一所懸命、色々と考えながら務めていきたいと考えております」

ルールー役：中村梅枝さん

「このような大きなコンテンツの役をいただき、大変光栄に思っています。世界中で愛されているゲームですので、私自身、怖い思いもあります。ティーダとユウナの旅を少しでも支えていけるように、また原作に敬意を持って演じさせていただきたいと思っております」

ユウナ役：中村米吉さん

「この作品において、まごうことなきヒロインでございまして、私もゲームをプレイしながら、こんなすごいヒロインをやるんだとゲームをやりながらも心して務めなければいけないと思った次第です。兄さん方に支えてもらい、守っていただきながらも、しっかりと舞台の上でユウナとして立って旅を続けていけるように頑張りたいと思います」