パルコ・プロデュース2021『首切り王子と愚かな女』の公開ゲネプロ、および取材会が6月15日(火)に開催され、井上芳雄さん、伊藤沙莉さん、若村麻由美さん、作・演出の蓬莱竜太さんが登壇し、公演への思いを語りました!!

写真左から蓬莱竜太さん、伊藤沙莉さん、井上芳雄さん、若村麻由美さん

 

本作は、架空の王国を舞台にしたダーク・ファンタジー。井上さんが演じる反乱分子の首を次々に落とす“首切り王子”トルと、伊藤さんが演じる運命的な出会いを果たす“愚かな女”ヴィリを巡る物語が描かれます。蓬莱さんがPARCO劇場に登場するのは実に5年ぶり。井上さんとのタッグは、2015年の『正しい教室』以来6年ぶりになります。

取材会で井上さんは、「初日というのはいつもドキドキするものですが、こういう状況の中で、とにかく今日までこぎつけて、1人も欠けることなく今日の日が迎えられたことが一番嬉しく思います。完全な新作なので、早く観てもらいたいです」と開幕を直前に控えた心境を語りました。

 

一方、伊藤さんは「舞台は4年ぶりなので(緊張で)吐きそう」と苦笑いを浮かべ、「この作品はとても大切で大好きなので、たくさんの人に観ていただきたいです。この時代、このご時世だからこそ、たくさんのファンの方に届いて欲しいので、精一杯がんばります」と意気込みました。

 

トルの母親で、永久女王デン役の若村さんは「ファンタジーというにはあまりにも深くて、今の時代を反映している作品です。蓬莱さんのワールドを楽しんでいただければと思います」と挨拶。

 

演出の蓬莱さんは「初日を迎えられない公演があまりにも多いこの時代に、初日を迎えらえる喜びと、演劇をやることが許されている以上、最大限遊んで、一生懸命、1日1日を楽しんでいきたいと思います」と思いを寄せました。

 

今作は、ファンタジーでありながらも、野心や愛憎、陰謀が取り巻く人間たちの姿も描いた作品ですが、蓬莱さんは「こういう時代なので、現代劇というよりはお客さんをフィクションの世界に誘って、せめてこの時間は(フィクションの世界を)味わってほしいという気持ちがありました」と話します。そして、「芳雄くんと沙莉ちゃんが一番格闘しあえるシチュエーションに置きたいと思って、2人の出会いからラストにどうなるかを楽しんでもらえるこういう舞台になりました」と説明しました。

井上さんは、企画当初から蓬莱さんと「こういう時だからこそ楽しいものがいいよね」と本作の話をしていたそうです。今回の役柄は、「蓬莱さん的には、僕のフィールドによってくれたというのですが、全然そんな感じがしない」と笑います。しかし、「ミュージカル界のプリンス」と呼ばれる井上さんだけに、「これ(「首切り王子」)こそが“王子”じゃないかと思うので、僕の王子役の集大成という気持ちで演じられると思います」と力強く語りました

また、役に共感できるところを聞かれると、井上さんは「最後に(トルとヴィリの)2人が選択する結末には共感はもちろんしますし、今の自分の年齢だからこそ重ねられるところがあると思います。ファンタジーではあるけれども、きっと見ている人それぞれに刺さる部分がたくさんある作品だと思います」とコメントしました。

伊藤さんも「ヴィリのやっていることや言っていることに違和感がないので、全体的に投影できている感じがします。ヴィリは姉に対しての執着がすごくあるので、その家族に対しての感覚は共感する部分です」と話しました。

この日の取材会はステージ上で行われましたが、出演者たちが立つステージには、ステージを取り囲むように机と椅子があるブースが並べられていて、中央に可動式の簡素な木の箱状のセットが置かれています。このステージセットについて、蓬莱さんは「ファンタジーを見に来た人には、こういうセットから始まるというのは衝撃的かもしれません。演劇の想像力や豊かさをそのまま舞台にあげたいと思うと、一番いいのは稽古場をそのまま再現することだと考えました。この稽古場からスタートして、物語がどうやってお客さんにファンタジーの世界に見えていくかという演出をしたいという思いがありました」と意図を明かしました。

その言葉通り、開幕5分ほど前から、役者たちは自分のブースに入り、開幕のための準備を始めます。そして、上演中、基本的にはずっと舞台上にいて、出番ではない時にはそれぞれのブースで待機しています。蓬莱さんは「役者のオフの姿、それからオンになる姿が見られる」と話していましたが、その言葉通り、役者たちの芝居以外の表情や芝居が作られていく過程をじっくりと見ることができました。

また、物語は、「呪われた子」とされて城から遠ざけられていたトルが、国の情勢の悪化や第一王子のナルが病に倒れたことから城に呼び戻されて、死のうとしているヴィリと出会うことから始まります。トルとヴィリ、トルと母親・女王デン、ヴィリとその姉で近衛騎士・リーガンのそれぞれの愛憎が描かれているので、ファンタジーというイメージとはかけ離れた深い人間ドラマが綴られていました。

しかし、ストーリーは決して明るくポップなものではなくとも、全編を通して重苦しい空気が流れているわけではありません。本質をついたようなセリフやトル王子の見せる幼稚さに思わずクスッと笑ってしまうなど、緩急がついた展開になっています。まさに“蓬莱ワールド”全開の世界観を楽しめます。

【公演情報】
■タイトル
パルコ・プロデュース2021『首切り王子と愚かな女』
■日程・会場
東京公演:2021年6月15日(火) ~2021年7月4日(日)  PARCO劇場
大阪公演:2021年7月10日(土) ~2021年7月11日(日) サンケイホールブリーゼ
広島公演:2021年7月13日(火) JMSアステールプラザ 大ホール
福岡公演:2021年7月16日(金) ~2021年7月17日(土) 久留米シティプラザ ザ・グランドホール
■作・演出 蓬莱竜太
■出演
井上芳雄 伊藤沙莉
高橋努 入山法子 太田緑ロランス 石田佳央 和田琢磨 小磯聡一朗 柴田美波 林大貴 BOW 益田恭平 吉田萌美
若村麻由美

■企画・製作 パルコ
■公式ホームページ

https://stage.parco.jp/program/kubikiri/

(2021,06,16)

photo&text:Maki Shimada

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