ミュージカル『マチルダ』は、英国の国民的作家、ロアルド・ダールの児童文学「Matilda」(「マチルダは小さな大天才」)をもとに、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーが2010年に製作し、瞬く間にウエストエンドで高い評価を得ました。2013年にはブロードウェイに進出し、英演劇賞ローレンス・オリヴィエ賞ではミュージカルとしては過去最多の7部門受賞、米演劇賞トニー賞では5部門を受賞。全世界で1100万人以上を動員し、100もの国際的な演劇賞に輝いた超人気作品です。
口ずさみたくなる音楽、ポップで印象的な美術、普遍的ながらもするどい脚本、そして彩り豊かなキャラクター達は世界中で熱狂的に愛され、ウエストエンド、ブロードウェイの他、オーストラリア、韓国でも上演され、ミュージカル『マチルダ』の不思議な力は世界中に広がり続け、日本でもこの3月から日本オリジナルキャストで上演されます!!
日本人オリジナルキャストとして、主人公・マチルダの母親であるミセス・ワームウッド役をWキャストで演じる霧矢大夢さん、大塚千弘さんへ開幕を約1ヶ月後に控えたカンパニーの様子や作品への思いをうかがいました。

 

ー出演が決まったときの気持ちを教えてください。
霧矢さん「ブロードウェイで作品を観劇したことがあって、あの作品!!というのが最初の印象です。観劇した当時もやはりマチルダの印象が強くて、このマチルダポーズをいつするの?と思って観ていましたが、なかなか出てこなくて、最後にこのポーズをした時のお客さまの盛り上がりはすごかったですね。大人キャストも個性的ですが、やはり最後はマチルダに全部持っていかれたなという印象でした。改めて持っていたパンフレットを見返して、こういう役の人いたいた!! と思い出し、オーディションには、この役は私がやらなくちゃ!!という気持ちで臨みました」

霧矢大夢さん

 

ー作品をご覧になった時には、この作品が日本で上演されるということはご存知でしたか?
霧矢さん「6、7年前のことですので、全く情報もなかったです。偶然も重なって再びこの作品に出会えたので、これは何としても何としても掴まなければ!!という思いがありました」

 

ー大塚さんはいかがですか?
大塚さん「私は、舞台は一度も観たことがなくて、小学生の時に本を図書室で借りて読んだのを覚えています。テレビで放送していた映画も見たことがありました。オーディションのお話を聞いた時は、マチルダは子供ですのでもちろん私ではないと思いましたが、意地悪なマチルダの母親役!?って(笑)。今まで演じてきた役は、どちらかというとミス・ハニー(マチルダを優しく導く学校の先生)に近い役が多かったので。私にワームウッド役が出来るかな!? と思いました。オーディション前の台本には、今までやってこなかった歌や踊りが詰め込まれていて、とにかく叫んだり、テンションが高くて。。。産後初めてのオーディションということと、昔にジャズやバレエのレッスンはやっていましたが、ダンスが多いミュージカル作品には出演したことが無いので、とにかく必死にやりました」

大塚千弘さん

 

ーオーディションから力の入ったやりとりがあったんですね。
大塚さん「オーディションが楽しかったですよね?」

霧矢さん「そうだね」
大塚さん「クリエイティブスタッフの方達とのやり取りがすごく楽しくて、お芝居がこんなにも楽しいものだということを改めて教えてもらえる、絶対に一緒に作品を作りたいと思えるオーディションでした」

霧矢さん「はい。これをやってくださいっていうのではなく、レクチャーがあって、いろいろなことを教えていただきながらでしたので、稽古のような感じでした」

大塚さん「ワークショップみたいな感じで楽しかったですよね!!」

 

ー上演に向けて現在真っ只中のお稽古もその延長線上にある感じですか?
大塚さん「そうですね。とにかく細かく教えてくださっています。何年も、世界各国で上演をされている作品ですので、システマチックになっているところはありますが、なぜそうなってるかということを飛ばさずにきちんと丁寧に教えてくださっています」

霧矢さん「目指すべき目標がしっかりとあるので、そこに自分が到達しなければいけないという焦り、憤りはありますね。最初からすごいペースで稽古が進んで行ったので、最初の情報量が凄くて、それを自分の役として自分の体に落として行くまでにはちょっと時間がかかりました」

大塚さん「全体のスケッチが最初にできているので、そこに自分をどう落とすかという感じですね」

 

ー今回Wキャストを演じるお二人は初共演になりますが、お互いの印象を教えてください。
霧矢さん「(大塚さんが)出演されている舞台は拝見させていただきました。私は宝塚の元男役ということもあって、結構アクの強い悪女とかを演じることが多く、どちらかというと、この役には今まで自分が演じてきた役が詰まっていて。新たな悪女を見出していかなければいけないって思っているけれど、大塚さんはあんまりそういう役をされているイメージが無いですし、私とは全くキャラクターが違うので、ミセス・ワームウッドをやったらどういう感じになるだろうって楽しみでした。(大塚さん演じるミセス・ワームウッドは)とってもキュートなお母さんだと思います」

大塚さん「ありがとうございます(照)。実は、私が宝塚歌劇団の作品の中で一番拝見しているのが霧矢さんが出演されている作品なんです!!宝塚の大劇場まで観に行ったことがあるくらいずっと見ていた方ですし、宝塚の方って少し構えていたのですが、ものすごくフランクに喋ってくださり、対等に見てくださって、ダンスを教えてくださるので、私にとっては夢のようです!!実は、この前、回してもらっちゃったし(笑顔)!!」

 

ー回してもらったとは??
大塚さん「実はお稽古中に、(小島)亜莉沙ちゃんとふたりで霧矢さんに回してもらったんですよ!!内心ものすごく嬉しくて、きゃーってなっていたのですが、あまり表情に出さないようにしていたのです。でも嬉しくて、亜莉沙ちゃんと二人で、回してもらっちゃったね!!と話をしてました」

霧矢さん「ペアダンスで、ちょっと検証しなければいけない動きがあってね!!」

大塚さん「宝塚歌劇団の時に娘役さんをずっと回していらっしゃったので、咲妃みゆちゃんと組んで踊ってる時にすごくかっこいい姿を見ることができて(笑顔)、安定感があるのがすごいって思いました」

霧矢さん「ついつい出ちゃうんですよね安定感や包容力が(笑)。これは女優として捨てていかないといけないって思っているんですよ」

大塚さん「でも今回の役は全然ありですよね!!」

霧矢さん「そうだね」

大塚さん「こんなことをさせていただける日が来るとは、夢が叶ったみたいな感じがしています。実は私、小学校の卒業アルバムに“宝塚歌劇団に入りたい”って書いていたんです」

霧矢さん「幼い時から好きだったんだね」

大塚さん「そうなんです!!好きだったんですよ!!だから、この前帰りながら“霧矢さんに回してもらえる日が来るなんて”と思ってぽわんとしてました(笑顔)」

霧矢さん「恥ずかしい!!」

大塚さん「今回霧矢さんとご一緒させていただくのは、本当に恐れ多いのですが……。たくさん教えてもらいながら、私が勝手に盗んだり、勝手にきゅんとしながらも、楽しく稽古をさせていただいてます」

 

ーお稽古場の雰囲気はどんな感じですか?
霧矢さん「割と場面ごとに分かれての稽古が多いので、会えない人も多くて、全体像がどうなっているかはまだ全く見えていないですね」

大塚さん「ミス・トランチブル校長には全く会えて無いですよね??木村達成さんには会見以来、今日初めて会ったんじゃないかなっていうくらいです」

霧矢さん「そのくらいに、他のシーンがどうなっているのか、実はマチルダでさえもあまり会えて無いですね。我々がやるラウドというナンバーがあって、いろいろな大人が後半にたくさん絡んでくるので、そこはみんなでワイワイやりながらだね」

大塚さん「そうですね!!次のお稽古が初めてのカーテンコールで、そこで全員が揃うので、久しぶりに会う方々と初めましてという方々が一堂に会するお稽古がやっと始まります」

霧矢さん「そういう意味では、中身がぎゅっとした稽古です。海外の方は1時間とか2時間としっかりと決まった時間の中で、できることをやるお稽古で、振り付けが途中で終わったとしてもここまでみたいな感じで終わります。凄く集中したメリハリのある稽古をしていますね」

大塚さん「Wキャスト、トリプルキャストの皆さんがすごく仲良しです。緊張感はあって、集中もしているんですけど、変なピリッとした感じは無くて、すごくやりやすい現場ですね」

 

ー最後に作品の見どころと皆さんへメッセージをお願いします。
大塚さん「見どころは多すぎますよね!!セットも衣裳もすべて素晴らしいです」

霧矢さん「本当に緻密にできている作品で、トリッキーな動きや振り付けもあるし、いろいろなところでいろいろな人が動いているので、どこを見ていいかわからないくらいですが、その中でもきっちりストーリーが伝わってきます。すごいっていう感動はもちろんですが、よくできてるね!!こうやって作られていくんだ!!という感心。誰がこれを一から考えたんだろう。これをゼロから生み出した人ってどんだけ天才なんだと思います。日本人としてはちょっと悔しくもあり、でもこの仕掛けを全部知ってるよという優越感もありますね。お客さまには、とにかくこのマチルダの世界に浸っていただきたい。大人のキャラクター達は、ほとんど普通の人がいなくて大人げない癖の強い人たちばかり。マチルダが一番立派で大人なんです。そこが慣れ親しんで見ている子供が主役の作品とは異なります。ですので、小さい子供たちが頑張ってるねという気持ちではなく、本当にこの小さい子が大きなシアターオーブの舞台に一人で立って、そこから我々が受けるパワー、それは本当に今までに味わったことのないものが味わえるんじゃないかなと思います。マチルダのパワーにのまれていただきたいです」

 

大塚さん「マチルダは、いわゆる悲劇の物語に出てくるような子じゃないんですよね。自分で道を切り開いて進んでいくという強さが、長い年月を経て児童書として世界中の人に愛されてきた理由だと思います。私自身も改めて大人になってマチルダに触れてその理由を考えた時に、ただかわいそうというのではなく、どんな弱い存在でも駄目なものは駄目と声に出して言ってもいいし、自分で思う信念を貫いていいんだということに対して勇気をもらえる作品だと思いました。周りがこうだからこうしなければという思いを、そうじゃなくてもいいよ、それを分かってくれる人が今近くにいなくても、視野を広げてみると理解してくれる人がいるかもしれないよと元気を与えてくれたり、背中を押してくれたりするような作品だと思います。皆さんマチルダに感情移入してご覧いただける作品ですし、すごく爽快な復讐劇でいろいろなものを発散できると思います!!」


▶︎霧矢大夢さん&大塚千弘さんの癒し事情◀︎
ーお稽古が続いているお二人の一番の癒しを教えてください。
霧矢さん「うちはね、犬がおりまして、そんなにテンションを上げないタイプの子なのですが、今はもうそれしかないです!!飼い始めのときに、可愛がりすぎて、ママしか駄目みたいになって寂しがりな子になっちゃったらいけないと思って、ドライに接してきたら、すごくドライに育ってしまって。帰ってきても温かくしているベッドから出ずに、“あ。帰ってきた??”って振り返るくらい(笑)。でもそういうちょっと冷たいところも好きって癒されてます(笑顔)」

 

大塚さん「こんなに歌って踊って汗をかくという作品はあまりないのですが、稽古から帰って冷やしたビールを飲むことです。めちゃくちゃ美味しいんですよね!!」

霧矢さん「冷凍庫に入れてるんでしょ?」

 

大塚さん「そうなんです!!冷凍庫に入れてキンキンに冷えたビールをお風呂に入った後、1本だけ飲むということに癒されています(笑顔)」

【profile】
霧矢大夢/Hiromu Kiriya
⼤阪府出⾝。元宝塚歌劇団⽉組トップスター。2009年に⽂化庁芸術祭演劇部⾨新⼈賞を受賞。2012年の宝塚歌劇団退団後も舞台を中⼼に活動。2015年に『I DO! I DO!』で 第22回読売演劇⼤賞優秀⼥優賞を受賞。近年の主な出演作品はミュージカル『ビッグ・フィッシュ』(2019)、ブロードウェイ・ミュージカル『NEWSIES』、ミュージカル『The PROM』(2021)、『薔薇と海賊』、ミュージカル 『ピピン』、ブロード ウェイ・ミュージカル『バイ・バイ・バーディー』(2022)。3月から上演のミュージカル『マチルダ』への出演を控えている。
■霧矢大夢さん公式ホームページ

http://www.orangeblue-company.com/management/kiriya.php
■霧矢大夢さん公式Instagram

https://www.instagram.com/kiriya_hiromu_kiriyan/

Blouse,Skirt/ALYSI (マツオインターナショナル カスタマーサービス tel:0120-29-1951)

 

大塚千弘/Chihiro Otsuka
2000年 第5回「東宝シンデレラ」審査員特別賞受賞。2003年ドラマ30『ショコラ』(MBS・TBS系)で主役に抜擢される。その後『ヤンキー母校に帰る』(2002 TBS)、『白夜行』(2006 TBS)、『アテンションプリーズ』(2006 CX)、『山田太郎ものがたり』(2007 TBS)、連続ドラマにレギュラー出演。映画では『レディ・トゥ・レディ』(2020)で主演を務め、社交ダンスに初挑戦。主な舞台出演作は、『シンデレラストーリー』(2003年初舞台)。『モーツァルト!』(2005)『ハゥ・トゥ・サクシード~努力しないで出世する方法~』(2007)、『屋根の上のヴァイオリン弾き』(2013)、『レベッカ』(2018)、『ダンス・オブ・ヴァンパイア』(2019)など多くの作品へ出演。

■大塚千弘さん公式ホームページ

https://www.toho-ent.co.jp/actor/1046
■大塚千弘さん公式Twitter

https://twitter.com/chihirootsuka03


【公演概要】
■タイトル
ミュージカル『マチルダ』
■日程・会場
プレビュー公演:2023年3月22日(水)~3月24日(金) 東急シアターオーブ

東京公演:2023年3月25日(土)~5月6日(土) 東急シアターオーブ

大阪公演:2023年5月28日(日)~6月4日(日) 梅田芸術劇場メインホール
■出演

マチルダ:嘉村咲良/熊野みのり/寺田美蘭/三上野乃花 ※クワトロキャスト

ミス・トランチブル校長:大貫勇輔/小野田龍之介/木村達成 ※トリプルキャスト

ミス・ハニー:咲妃みゆ/昆夏美 ※Wキャスト

ミセス・ワームウッド:霧矢大夢/大塚千弘 ※Wキャスト

ミスター・ワームウッド:田代万里生/斎藤司(トレンディエンジェル) ※Wキャスト

ミセス・フェルプス:岡 まゆみ/池田有希子 ※Wキャスト
原慎一郎 ほか

■公式ホームページ

https://matilda2023.jp/

■公式Twitter
https://twitter.com/Matilda2023JP

(2023,03,08)

photo:Hirofumi Miyata/styling: Akiko Yamashita(霧矢さん)/hair&make-up:Maiko Suzuki(霧矢さん)/interview&text:Akiko Yamashita

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